「フフ、迎えに来ちゃったよ。」

「遅いぞ、馬鹿//」


白い薔薇は俺達を祝福するように真っ赤に染まって道路一面を情熱的に染め上げた。








一日目

もう二度と鳴らないと思ってたインターフォンが深夜に鳴って慌ててドア開けたら居なくなったはずの恋人が立っていた。
最後別れ際の重い雰囲気は相変わらずだったけれど、それでも嬉しくて死んでしまいそうだった。
ヨシュアは特に何も言わないまま当たり前のように我が物顔で俺のベッドに転がる。
「なに突っ立てるの、こっちにおいでよ」
あっさり居なくなったくせに当然のように戻って来てセックスしようだなんて、文句の一つでも言ってやりたいけれど、
やっぱり懐かしい腕の中に収まりたくて躊躇しながらもあいつの隣に行った。
喧嘩して出て行った最後の夜みたいに適当な愛撫、適当なキス。
「う、あっ…痛っ…」
「ん、もうイきそう…」
ろくに慣らしてないから痛くて涙ぼろぼろ出るけど歯食いしばって枕に顔を突っ伏して耐えた。
人の体道具みたいに扱いやがって、しかも外では浮気三昧。
別れ切り出したら本気でキレられて意味が分からなかった。
それでもヨシュアが居なくなった後は毎日抜け殻になってた俺。
口には出さないけれど、本当は涙が出るほど嬉しいんだ。
「うぁ…あっ」
ヨシュアに突き上げられる度に懐かしくて切ない想いが込み上げる。
痛くて零れている筈だった涙はいつしか喜びの涙に変わっていた。


二日目

やるだけやってさっさとどこかへ行ってしまう所は相変わらずで昨夜はまた一人きりで朝を迎えた。
それでもベッドにはたしかにあいつの臭いが残っていたから布団をかき集めてぎゅっと抱いて目を閉じていたらいつの間にか深い眠りについていた。
あんなにぐっすり眠れたの、もうどれくらいぶりだろう。

テレビもつまらない通販ばかり、街の電気も消えて静かで暗い深夜。
今日もインターフォンが鳴って安心して胸を撫で下ろした。
「起きてたんだ、良かった」
ドアを開けると恋人は嬉しそうに額にキスしてまた我が物顔で部屋に上がりこむ。
昨日より少しだけ優しいのは気のせいだろうか。
ベッドに腰掛けたと思ったら抱き寄せられてキスされた。
「う、ん…」
珍しく舌入れてきて丁寧に絡めてくる。
初めての時みたいに嬉しくて胸がドキドキした。
素早く服を脱がされてやっぱり自分は脱がないのは相変わらずなんだけど、一々イラついてたそんな事も今となってはこいつらしくて嬉しかった。 
「あ、ん…」
挿入したまま手コキされて一緒にイこうなんてどのくらいぶりだろう。
付き合って半年くらいはこんなセックスしてたっけ。
懐かしいな、もう二度とあの頃のお前は戻って来ないと思ってた。
「ん…ネクくん、イくよ…」
「う、あ!おれ、も…っ!」


三日目

今夜もヨシュアはやって来る。
優しく抱いてもやっぱりさっさと帰ってしまうけれどまた明日も来てくれるという漠然とした思いがあったから一人でも寂しくなかった。
今夜は一時間ほど早くやってきて、また顔見た瞬間にキスされた。
「テレビ面白いのやってないね、ゲームでもしようよネク君。」
俺んちに上がりこんでセックス以外の事したがるなんて一体どんな風の吹き回し。
「いいけど…」
なんかこんなの久しぶりで気恥ずかしくて隣に座るヨシュアの方が見れない。
付き合って最初の頃よくやってたゲームのセーブデータを呼び出して懐かしい画面を開く。
「この前のところからだね、今日こそ絶対レアアイテム取ろうよ!」
「…ああ、そうだな。」
こいつの中ではついこの前の出来事なんだな、そうか、きっと今はまだラブラブで愛情に溢れてたあの頃なんだ。
画面の動きが急に止まってどうしたのかと思って隣を見れば、ヨシュアは物欲しそうにこっちを見ていた。
情熱的な眼差し、まだ恋してますみたいなキラキラした顔。
そんな顔で見詰められたらまともに目見れなくて俯くしかない。
無理矢理顎を上に向かされてキスされたら心臓が止まりそうになった。
「あっ、よしゅ、あ…ん」
「ネクくん、ここ気持ちいい?」
やりかけのゲームを急いでセーブしてこんな事始めるから中々レアアイテムが取れない。
名前呼ばれながらセックスするなんて今更恥かしいよ。
でも俺の体は名前呼ばれる度に嬉しそうに快感に震えた。
繋がってる部分がヨシュアの事を大好きって何度も締め付けてその度にこいつも気持ち良さそうに息を詰まらせてた。
体温全く感じない冷たい体でも挿入して抱き合えばあの頃みたいに体が熱くて溶けそうになった。


四日目

昨日はセックスした後少しだけ一緒に居てくれてコーヒー飲みながら談笑なんかしてくれた。
帰り際、「明日も来るよ」と言ってキスされた額が熱かった。
今夜も静かで寂しいこの部屋にインターフォンが鳴り響く。
さっきまで一人で抜け殻みたいになってた俺は、まるで生き返ったようにドアを開けて大好きなこいつを迎えた。
「ゲームでもやろうと思って持ってきたんだ。やりたかったんだよね、これ。」
それ昨日やってたあの中々進まないゲームだろ、って突っ込みたかったけど、
わくわくしながら説明書読んでる顔が子供みたいで可愛かったから何も言わずにそんなヨシュアの事を見ていた。
「フフ、やっぱり後でやろっか。こっちの方が先にしたい」
説明書放り投げてソファーに押し倒された。
こんな風に性急に求められるのが嬉しくてここ数日連続で出してるはずなのにまた股間が元気になる。
俺淡白だと思ってたけどそう言えば最初の頃はこんな風に毎日でも興奮してたよな。
冷たい唇を押し当てられて激しいキスされながら速攻で服を剥ぎ取られる。
俺の乳首に噛み付きながらヨシュアは器用に自分のシャツを脱いで肌を重ねてくる。
冷たい胸に手を当てても心臓の音は聞こえなかった。
それでもぎゅうって抱きついてドキドキしっぱなしの俺の胸を重ねたら、まるで二人の心音が合わさってドキドキ言ってるみたいで勝手に安心した。
「なに、今日は甘えん坊だねネク君。フフフ」
「たまには、いいだろ…甘えても」
俺が甘えてると思って嬉しそうにヨシュアが微笑んだから、急に切なくなって目に涙が滲んで肩に顔埋めて見られないように頑張った。


五日目

「今日泊まってもいいかい?」
今夜もやって来たこいつは遠慮がちにソファーに座って恥かしそうにそんな事を言い出した。
「ああ、泊まっていけよ。」
「本当?!実は歯ブラシ持って来たんだ。」
嬉しそうにピンク色の歯ブラシを見せ付けてくるヨシュア。
もう毛がばさばさになったおんなじ歯ブラシが俺の水色の歯ブラシと洗面所で仲良く並んでるのは内緒にしておこう。
「今度ゲームでも持ってくるよ、だからたまに泊まりに来てもいい?」
「好きにしろよ…」
「ネク君、僕嬉しいよ。」
こんなやりとりしてたのは丁度付き合って一週間ほど経った頃だったか。
ヨシュアの中でどんどん遡る時間、恋に恋してた様な幸せなあの頃が蘇ってくる。
どんどん初々しくなっていくヨシュア、俺に触れる指が遠慮がちで優しい。
今夜はベッドに押し倒されて正常位で抱かれた。
抱き締めた背中は冷たいけれど確かにそこに存在するのに、気のせいかお前の姿が少しだけ薄くなったように感じる。
このまま消えてしまうんじゃないかって不安で焦ってずっと体温の無い背中にしがみ付いていた。
「ネクくん、イくよっ…」
「んっ!よしゅ、あ!」
確かに俺の中にヨシュアを感じるのに、出された筈の精液はどこへ消えたのか、俺の体内には今日も何も残されていない。
隣で静かに眠るヨシュア、あの時みたいに二度と目覚めない気がして明け方に何度も起こしたら、その度に寝ぼけながら俺を抱き締めてくれたから安心した俺はいつしか眠りについていた。
朝になったら隣に居たはずのヨシュアはそこから消えていた。
泊まると言っていたからたしかに帰っては居ないんだけど、消えたって言うのも何だか寂しいよ。


六日目

「ネク君ち分かりづらいからちょっと迷っちゃった。」
「一人で来るの初めてだもんな」
「そうだね、お邪魔しまーす。」
そっか、今日は付き合って二日目の夜なんだ。
まだ慣れない俺の家を見渡しながら珍しそうに俺のコレクションのCDを見ている。
「ここ座ってもいい?」
「ああ、適当にくつろいでろよ。」
落ち着かないのかそわそわしながら遠慮がちにベッドに座るヨシュア。
俺もあの頃はこいつが部屋にいるだけで落ち着かなくてずっとそこら辺を整理整頓したりして気を紛らわしてたっけ。
ああ、何だか涙が出てくる。
「コーヒー淹れてやるよ。」
「うん、ありがと。」
台所で声を殺して泣いたのは秘密だ。
だって今日のあいつ昨日よりも薄いっていうか、上手く言えないけど存在そのものがどんどん薄くなっているように感じる。
明日で丁度七日目、カレンダー見たら丁度明日は俺たちが付き合った記念日だったんだ。
だから帰って来たのか?
明日が終われば多分もう二度と会えない、不思議とそんな気がするんだ。
「ネク君?どうしたの?」
中々戻らない俺を心配したのかいつの間にかヨシュアが後ろに立っていた。
「な、何でもない。」
「泣いてるのかい?どうしたの?」
泣いている俺を見てヨシュアは不安そうな顔をする。
「ずっと、一緒に居てくれるか?」
無理だって分かってるけどついそんな我が侭を言ってヨシュアに抱きついた。
冷たい背中、温かいあの背中はもう二度と触れない。
「何言ってるの?当たり前だよ、ネク君」
俺の頭を撫でながら力強く抱き締める細い腕。
体温は感じられなくてもまだこいつはここに居る。
低くて妙に色っぽい声やセクシーな香りの香水、高そうなシャンプーの匂いは変わってない。

神様どうか時間を止めて下さい。


七日目

今日は俺たちが付き合って一年目の記念日。
「ネク君が、好きなんだ…」
頬を赤くして苦しそうに呟く姿を見ていたら、切なくて胸が張り裂けそうだった。
「俺だって、ずっと、同じ気持ちだった…」
「本当に?ネク君!」
泣きそうな顔してヨシュアが俺に抱きついてきた。
この後俺達は初めて体を重ねるんだ。
熱っぽい目で少し俺を見詰めた後、キスされてベッドに押し倒された。
遠慮がちに進入する舌を絡め取ってやったら火がついたように激しく唇を貪られた。
丁寧に電気まで消してくれたからこれで泣き顔見られずにすむ。
「ぁ、んっ…」
ヨシュアが愛しそうに俺の体中にキスをする。
触れられたところが熱くて堪らない。
「ここ、僕の入るかな…」
いつも無理矢理突っ込まれて散々な扱いを受けていた場所を遠慮がちに触られて複雑な気分になる。
本当に不安そうなヨシュアに大丈夫だろ、って言ってやったら足広げられて丁寧に舐められた。
くすぐったくて体を捩っていると、濡れたとこに指が入ってくる。
一々「痛くない?」なんて聞いてくるからそんなの今更恥かしくて顔から火が出そうだ。
「あっ、んっ!」
「ここ、気持ちいいんだ?」
とっくに開発された体はヨシュアの指に的確に反応していく。
この快感もこんな思い出があったから感じられるんだよな、なんて思ったら早くも涙が滲んでしまった。
カーテンから漏れる街灯の薄明かりでなんとなく分かるヨシュアの表情。
余裕無さそうな顔で俺の様子を伺うヨシュア、あの時こんな顔してたんだなんて思ったら少しだけ笑いが込み上げてきた。
「痛かったら、言ってね?」
足を肩に担がれて不安そうに俺の中にヨシュアが入ってくる。
「あっ!う…んっ」
「フフ、入っちゃったね」
嬉しそうに俺の髪を撫でながら暫く繋がったまま俺を抱き締める腕は相変わらず冷たい。
そういえば最初はこんな風に優しかったっけ。
でも今思えば最後の方の適当なお前もやっぱり大好きだったよ。
浮気されたし、セックスも乱暴だったけど、ちゃんとこうして会いに来てくれた。
別れるって切り出した時は理性無くなるくらい怒ってくれた。
でもその所為でお前は…
「あ…ネクくん、もう、いい?」
「ん、おれもっ…限界っ…」
これが終わればもう二度と会えない、太陽なんか昇らなければいいのに。
頭を抱き寄せて思いっきりキスしながらイってやった。
俺の体は離れたくないと言うように何度もヨシュアを締め付けている。
俺の中でびくびくと震えるヨシュア、でもやっぱり今夜も俺の中にこいつの証は残らなかった。

薄暗い部屋でヨシュアの周りだけがうっすら輝いて見える。
輪郭なんか消えそうで完全にこの世の者じゃない。
「ねえ、ネク君、好きって言ってよ。」
一年前恥かしがって好きだと言わなかったっきり一度も言ってやれなかった。
最後にこの部屋を飛び出して行く時に泣きそうな顔で「一度も好きって言ってくれなかったね」って言われたっけ。
これを聞きたくてお前は戻って来たんだろうか。
わざわざこんな付き合った記念日に、こんな思い出まで引っ提げて。
ヨシュアらしい憎い演出してくれる、一生言ってやらないつもりだったけど俺の取っておき冥土の土産にくれてやるよ。
「好きだ、俺、お前が大好きだ///」
「フフ、ありがとうネク君、嬉しいよ…」
ちょっと涙ぐみながら本当に幸せそうに笑ったヨシュアは直後音も無く姿を消した。
残された暗い部屋にはヨシュアの香水の匂いが漂っていて確かにあいつはさっきまでここに居た事を実感する。
自分だけ満足して俺を置いて行くのかよ。
俺これからどうしたらいい、お前が居なくなったこの部屋はいつもより余計に暗くて静かだ。




ヨシュアが命を絶った交差点に今日も俺はあいつの好きだった白いバラの花を飾りに来る。
喧嘩して俺の家を出て行ったヨシュアは理性失ってたのか、この交差点で車に轢かれて即死した。
わざわざ高そうな真っ白なベンツに当たったのが何かお前らしい。
しかも顔は傷一つ無くて綺麗な顔して眠ってるみたいだった。
そんな事を思い出しながら感傷に浸っていると丁度遠くから真っ白な高級車が走って来た。
いっそこのまま俺もあいつの元に行ってしまおうか、
そんな事を思いながら躊躇っていたら運転手の顔が辛うじて分かる距離に近付いて来る。

ヨシュア?

一瞬見えた顔は俺の妄想か幻か。
真っ白なバラの花びらが宙を舞う中、俺達は永遠に結ばれたのだった。



神様時間を止めてくれてありがとう、俺達はもう二度と離れません。







END











初めて死にネタに挑戦してみました。
ハッピーエンドな死にネタはあまり無いと思いますが死にネタ=暗いのが嫌でこうなりました!
とっても意味の分からない話ですがヨシュアが幽霊な話です。
幽霊ヨシュアは付き合った頃に時間が遡っていくみたいです、意味不明ですいませんorz
結局ネクも死んでしまいましたが二人とも幸せっていうオチ!
サイコ系なラストではないです決して!
冒頭の会話をどうしても入れたくて結局冒頭に入れたらますます意味不明になりました!
頭おかしい話書いて申し訳ないww
最後まで読んで下さってありがとうございました!!