大人の姿をした僕のいざこざから数週間が過ぎ、僕達の仲もより深いものになっていった。
ネク君が僕の全てを受け入れてくれた気がして愛しくて仕方ない。
忙しくて学校に行けない日も時間を作って会ったり、電話もメールもたくさんした。
それなのに、
「ネク君♪手繋ごうよ!」
「ばか!男同士でそんな事したらおかしいだろ?!」
「周りなんて関係ないよ、僕は気にしないよ?」
「俺は気にするっ!!」
学校帰りに手を繋いで歩きたいのに、色んな所でキスしたりしたいのに。
ネク君に男同士なのを自覚しろ、と説教されてしまった。
それからというもの、最近学校でのセックスもネク君のガードが固くなってきた。
何時もの二人だけの秘密の階段は最近ではただの溜まり場になっている。
「フフフ、ネク君口にご飯つぶついてる。」
「え///?!」
ネク君が焦って口の周りを触っている。
その手をそっと除いて代わりに僕の顔を近付けた。
こんな回りくどい嘘でも付かないと学校ではキスすらまともにしてくれない。
ネク君が覚悟するみたいにぎゅっと目を閉じた。
そっと唇を重ねて舌でなぞると少し入り口が開いたからすかさず舌を差し込んだ。
「う…///」
こうなってしまえばもう僕のペースに持ち込む自信があった。
結局何だかんだ言ってもネク君もお年頃だし、快楽には勝てっこないよ。
熱烈な腰が砕けるようなキスをするためにネク君の体を両腕で抱きかかえた。
片方は腰を強く抱いて、もう片方は頭を抱いてよりキスを深いものにする。
ネク君の唇は柔らかくて、まだ煙草なんか吸った事もない甘く清潔な味。
僕にとってはいつしても新鮮で清いものだった。
キスに酔いしれているのはいっそ僕の方かもしれない。
キスしながら片手でネク君のネクタイを外しにかかる。
このまま服を脱がせて、今日は学校で裸にしちゃおうかな。
なんて変態ちっくな妄想をしていたらその手をネク君に掴まれてしまった。
「はぁ…だ、だからっ学校じゃ駄目だ!」
真っ赤に唇を腫らしてネク君が僕を睨む。
また怒られちゃった。
これが楽しみで学校に来ているようなもんなのに今更教科書開いて勉強しろって?冗談じゃないよ。
「誰も居ないからいいじゃない、それとももう僕とするのが嫌なのかい?」
ネク君も難しい年頃だし多少は僕も譲ったけど、流石に何度も思い通りにならないと僕も苛立ってくる。
「そ、そういう訳じゃ///誰が来るか分からないだろ?」
「誰が来るっていうんだい?ネク君ストーカーでもいるの?」
曖昧なネク君の態度に段々僕の機嫌が悪くなる。
ネク君はそんな僕を呆れるように見詰めた。
「どうせまた僕の事我侭だと思ってるでしょ?」
「お、思ってない…」
何だかばつが悪そうにネク君は僕と目を合わせない。
なにかあったのかな…思考読んじゃおうかな。
少し沈黙が流れるとネク君がもう行こう、と言い出した。
重い雰囲気のままネク君に続いて階段を下りるとそこに一人の女の子が立っていた。
こちらに気が付くと彼女の頬が桃色に染まる。
「あっ…」
今度はネク君の顔色が青くなる。
「桜庭くん!」
清楚で可愛らしい女の子、誰だろう。
ネク君の目が泳いでいる。
「いつも二人でここにいるから今日もここだと思って。桜庭君、この前の返事は…」
女の子が頬を赤らめて恥かしそうに俯く。
まさかネク君告白でもされたのかな?
「えっと、その…俺っ///」
ネク君が気まずそうに僕をちらちら横目で見る。
はっきり断っちゃえばいいのに、どうせ僕がいるんだし。
「何?ネク君、早く返事してあげたら?」
僕の様子ばかり伺うネク君に痺れを切らしてつい声のトーンが下がってしまう。
ネク君はずっともじもじしながら顔を真っ赤にしていて、もしかして振るのしぶってるのかな?
段々僕の苛々が増していく。
「ネク君、代わりに僕が言ってあげるよ。君、ネク君は…」
「うわぁ!!やめろっ!もうお前はどっか行け!!」
僕が断ろうとすると大慌てしたネク君に口を塞がれてしまった。
おまけにどっか行け、だなんて!!
失望したよネク君、僕より女の子の方がいいのかい?!
口を塞ぐネク君の手を振り払うと、僕は黙ったまま二人を後にして教室に向かった。

正直、どんな可愛い女の子が現れてもネク君の僕への愛には絶対の自信があったから物凄く戸惑ってしまう。
結局どんなに好きだといって体を重ねても僕は男だし、思春期のネク君の男の願望までは満たせないのかもしれない。
色んな事を乗り越えてやっとこんな関係になったのに今更超えられない壁を作るなんて。
若い好奇心は時に残酷だね。
でもこんな事で僕は君を他の人に譲ったりはしないからね、ネク君。
いつもの階段は人気の少ない校舎で教室まではうんと離れている。
しんとしていてやたら長く感じる廊下を僕とネク君の距離みたいに感じながら一人で歩いていた。



あれからどうしても嫉妬が拭い切れなくてついネク君を無視してしまった僕は、やっぱり大人気ない。
一人きりの帰り道、すれ違う下校するカップルの学生を見ていたら酷く寂しい気持ちになった。
僕とネク君だって本当はあのカップル達よりもずっと仲が良くて深い関係なのに。
既に秋に差し掛かった季節はいつの間にか日の光を早く隠してしまい、もう空はオレンジ色をしていた。
ビルの隙間から見える空をぼうっと見詰めながら歩いていると、ネク君みたいな鮮やかなオレンジはどんどん黒に侵食されていく。
やがて渋谷の街にネオンが光り出してオレンジは完全に消えてしまった。

「羽狛さーん」
こんな時はやっぱりこの人に頼るに限る。
僕のただ一人の相談相手で、監視役。
今から僕がしようとしている事、止められるかな。
コンポーザーの力こんな風に使ったら何か問題になるだろうか。
「今日も客いないね、もう店閉めたら?」
「うるせえなぁ、今日は何の用件だぁ?」
ワイルドキャットは相変わらず閑散としているので、どんな話も気兼ねなく出来るのが気に入っている。
「僕、性別変えてもいいかい?」
羽狛さんはコーヒーを入れ終わると暫く僕を見詰めた。
「はぁ??」
間抜けな顔、意味分かってるのかな?
「もう、ちゃんと聞いてるのかい?僕女の子になってもいいかな?」
すると羽狛さんの顔色が少し変わる。
「…何かあったんですか?また誰かに狙われているとか」
「違うよ!ネク君が…」
ネク君という名前を出した途端羽狛さんは急に脱力して深いため息をついた。
この名前を出すと途端に真剣に話を聞いてくれなくなるから嫌なんだよ。
「そんな事に力使うのか…はぁ、困ったもんだ。」
「大丈夫かい?」
「…いいんじゃねぇの?(はぁ、レポート何て書こう…もう放棄してぇよ)」
羽狛さんの許しを貰ったら何だか視界が明るくなった。
これでネク君喜んでくれるよね!
「早速やってみるよ!羽狛さん、ちょっと待ってて♪」
僕は軽い足取りで急いで二階の羽狛さんの部屋へ走った。
こんな力使ったことないけど、きっと僕なら絶世の美少女になるに違いないよね、フフフ♪


「…羽狛さん」
女の子の体になる事に成功してこれでネク君と堂々といちゃいちゃ出来る、なんて思ってたんだけど…
僕の足取りは予想外にも重かった。
「ん?どうしたぁ?お♪女の子になったなぁヨシュア!!可愛いじゃねぇか!!」
羽狛さんがにやにやしながら僕に近寄って来る。
本当なら全裸になって見せびらかしてやろうと思ったけどどうもそんな気になれなかった。
「ん?どうした、元気ないなぁ。」
「だって…羽狛さん、見てよこれ」
僕は着ていた制服の上着を脱いで、シャツのボタンを一つ一つ外していった。
「おっおい///!!落ち着け、何考えてんだっ!!」
羽狛さんが何か勘違いして真っ赤になっているがそんなの僕にはどうでもよかった。
「見てよこれ、こんなに小さいおっぱい、ネク君気に入ってくれるかな…。」
僕の胸には決して大きいとは言えない小ぶりの乳房と飾り程度の小さい乳首が付いていた。
乳首も綺麗なピンク色だし美乳と言えば美乳なんだけど、微乳に限りなく近い。
それでも羽狛さんを見ると、馬鹿にされると思いきや意外に顔を真っ赤にして食い入るように見ていたので少しだけ救われた。
こんな幼児体型決して僕の好みじゃないけれどそんなに悪い方でもないのかな。
「…その、結構きれいだぞ?いいんじゃないか///?」
「でも羽狛さん、毛なんて全然生え揃ってないんだよ?見てよ、こんなの…」
僕がベルトを外してズボンを脱ぐと羽狛さんが飛んできた。
「や、やめろ!!最近ご無沙汰なんだから、お、襲ってもいいのか?」
羽狛さんに下着を下ろそうとした手を止められる。
羽狛さん、特に女の影は見えないけどもしかしたらロリコンなのかな?
そうだとしたらとんだ犯罪者の天使だね…
「こんな体に欲情するなんて、羽狛さんって…」
「なっ何考えてんだ!!ロリコンじゃねぇぞ!!!」
「そう、よかった。僕の体ネク君満足してくれるかな?」
「ああ、15歳ならそんなもんで十分だろ!それより、早く服着ろ!本当にヤっちまうぞ!」
「フフフ♪そうだよね。」
どうも本気で羽狛さんが欲情しているみたいだったから僕はまた二階に戻った。
改めて鏡を見ると結構可憐で魅力的な美少女だ。
そんなに顔は変わらないけど、少年の僕よりも目が大きくて睫毛も長いし肌も柔らかくてすべすべしてる。
身長も若干低くて手なんて凄く小さい。
ネク君が気にしてたシキって子よりも断然僕の方が可愛い。
男だったら一度は女の子になってみて色々気持ちいい事試してみたいけど、それはネク君の為に取っておくよ。
そんなえっちな事を考えていたらお腹がきゅんとした。
女の子は子宮で考えるって言うけどこういう事なのかな。
ネク君を想う度に僕のお腹は何度も甘く疼いた。



あれから色々と学校の手続きの為に二日間休んでしまった。
その間ネク君から何度も電話がきたけれど、声が女の子なので出るわけにはいかなかった。
謝りのメールが来てそれを当たり障りなく返事したくらいだ。
きっと今頃落ち込んでいる。
早く君に会って驚く顔が見たいよ。
そんな期待に胸を膨らませて僕は教室の扉の前に立っていた。
羽狛さんとスカートはやっぱり短い方がいいって決めたのでお尻が少しすうすうして落ち着かなかった。
担任が呼びに来るのが待ち遠しい。
「桐生さん、入りなさい」
「はい、先生」
僕が教室に入ると皆の視線が一斉に集まってきた。
前の時は女子の好奇の目が凄かったけど今回は男子が食い入るように見ている。
そりゃあ僕美少女だし、当然だね。
肝心なネク君はやっぱり目をまん丸にして唖然としてこちらを見ていた。
「はじめまして、桐生義絵です。義弥の双子の妹です、よろしく♪」
「桐生君は病気で暫く学校に来れないそうだ。ええと、君の席は…」
「兄の席でいいです!」
僕は勝手に決めるといつものネク君の隣に座った。
「フフフ、よろしく♪」
可愛く笑って見せるとネク君は顔を真っ赤にして何か言いたそうな目をしている。
流石にこの前僕の正体もばらしたし、気が付いてるかな。
「教科書見せてよ。」
強引に机をくっつけると周りの男子がネク君を恨めしそうに見ていた。
一時間目は予定通り早速羽狛さんの授業だった。
羽狛さんがやる気無さそうに授業を始めると僕は計画通りそれを中断させた。
「先生!お腹が痛いです、保健室行っていいですか?」
「ああ、行ってこい。桜庭、連れてってやれ。」
羽狛さんはいつもいい仕事をしてくれるよ。
「え?お、俺?!」
「うん、行こう♪」
僕は計画通りネク君を連れ出して、二人きりで授業をさぼる事に成功した。


授業中の教室をいくつか通り過ぎ、静かな階段を上っていった。
「そ、その///お前、誰だ?」
僕がさっそうと歩いていると急にネク君が立ち止まった。
恐らくもしかしたら本当に妹かもしれないと思って核心は突けないのだろう。
「フフフ♪誰だろうね」
僕は可愛く笑って見せるとネク君の手を握った。
こうして向かい合うとネク君の目線が少し高くて何時もよりも手が大きく感じる。
繋いだ手に指を絡ませてより強く握るとネク君は頬を真っ赤に染めた。
「よ、ヨシュア…だな?!」
「フフフ♪どうかな♪」
「何からかって!!電話も出ないし俺がどれだけ、その…不安だったか」
ネク君の声が少しだけ震えている。
そっか、よかったちゃんと僕の事考えてくれてたんだ。
「…あの女の子はどうなったの?」
「そんなの、もう断ったよ。」
「でもネク君あの時なんだかしぶってなかった?」
「人の気持ちにはちゃんと応えてやらなきゃいけないだろ?誰かの前で振るなんて、そんなの無理だ」
真剣なネク君の目、そういえばネク君は優しい子だったね。
「…女の子の方がいいって思わなかったのかい?」
「そんなの、興味ない。…男でも女でも、興味ないな//」
その言葉に僕以外は、というニュアンスを感じて急に嬉しくなった。
それを聞いて僕も安心したよ、まさかネク君に限って乗り換えるなんてしないと思ってたけど僕も少しだけ不安だったんだよ。
「あの子がいつも俺の事見てるから、学校でなんかしてたらお前が悪く言われると思って…」
「フフ、そんなの僕は気にしないのに」
二人の間の空気がふっと和んだ。
気が付いたらネク君が照れ臭そうに微笑んでいたから、きっと僕のが伝染したんだね。
「ところで何でお前そんな姿にっ///何やってんだよ!」
「フフフ♪結構可愛いでしょう?これで堂々とネク君と手繋げるじゃない♪」
僕は繋いでいた手を引き寄せてネク君にキスをしようと、したけれどちょっと身長が足りなかった。
仕方ないのでぎゅっと体に抱きついてみた。

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僕の胸をわざと強く押し当てて。
「おっおい///!!!ばかっ///!!」
ネク君が焦って僕を離そうとする。
凄く戸惑っているみたいだった。
その証拠に抱きついただけでいつもよりネク君の胸のどきどきが大きい。
「フフフ、キスしてよネク君♪」
ネク君の首に腕を回して少し背伸びをした。
すると意外にも誘われる様にネク君の唇が近付いて来る。
僕の細い腰に腕が回されて珍しくネク君からのキスを貰った。
「んっ…」
舌の動きがぎこちなくてたまに歯が当たったりなんかするけれど、とっても甘くて可愛らしいキスでまた僕のお腹がきゅんとした。
下半身のどこかが熱くてじんじんとする。
何だろうこの感じ、凄くもどかしくって興奮する。
下腹部に熱が集まる感じがして堪らずネク君の手を無理矢理僕の胸に押し当てた。
「なっ///?!」
震えるネク君の手の平の上に僕の手を置いて動かしてみると少しくすぐったい。
でも次第に味わったことの無いもどかしさを感じて少し怖くなってネク君を放した。
「…ネク君、体が変///」
「えっ///?!だっ大丈夫かっ?!!」
「…うん」
男だったら勃起したら治めるか出しちゃえばいいんだけど女の子の場合はどうなんだろう。
もちろん放っといてもいいんだろうけど…。
「ネク君、保健室連れてってよ…」
「分かった、すぐ行こう!」
ネク君は急に真剣な顔つきになると僕の手を引いて歩き出した。