あのゲームからいつもの日常に戻って、早いものでもう一月が過ぎた。
世界の開けた俺はヨシュアと学園生活をおくりながら甘い青春を謳歌していた。
初恋から強引にヨシュアに色々な初めてを更新され、ついには初体験まで迎えてしまったのはまだつい、この前の事。
一線を超えてより深い仲になったというのにヨシュアは最近あまり学校に来ない。
無理をして学生なんてやっているものだから、向こうの世界との両立で忙しいみたいだ。
そんなヨシュアの立場や仕事なんて結局のところいまいちよく分からず、敢えて深入りしようとも思わなかった。
何せ俺の彼氏の仕事は神様みたいなものだもんな。
首を突っ込んだところで到底理解も出来ないし、遠くに感じてしまうだけ。
だからたまに学校に来た時は同い年の学生としてヨシュアと甘いお付き合いをしていた。
でもこう何日も会えないとさすがに、寂しい。
ここ一週間は電話もろくによこさず、短いメールが数件きただけ。
最後に体を重ねたヨシュアの体温を思い出しながら、未だに触れられない寂しい体を時々一人で抱きしめていた。



今日も持ち主の現れなかった隣の机にまた明日、と心の中でさよならを言って一人で教室を出た。
渋谷でも行けばどこかで彼に見つけてもらえるだろうか、なんて思いながらも行き先の決まらないまま校門を出た。
俺の心を反映するように今日の空は厚い雲に覆われていて、今にも空が泣き出してしまいそう。
何となく足は彼を意識して渋谷に向かっていた。
学校帰りによく二人で遊びに来たりしていたけど、一人で来るのは久しぶりだな。
すれ違うたくさんの人達。
この時間は特に学校帰りの友達同志やカップルが多くて、
賑やかな街に自分は今似つかわしくないな、なんて思っていつしか人通りの少ない方へと足を進めていた。 
寂しいと強く思った。
恋なんかしなければ孤独を感じる事なんてなかったのに。
一人きりになると一緒にいる時よりも何倍も強く彼に恋い焦がれている。
宇田川町路地裏、落ち込んだ時はよくここに来てこのCATのグラフィティを眺めていたっけ。
ヨシュアと出会ったのもこの場所だったよな。
色んな感情を抱えてそのグラフィティを眺めているとCATが優しく俺を宥めてくれる。 
すっかりその色彩に陶酔していていつの間にか周囲に人がいたなんて気が付くはずもなかった。
「お兄さん何してんの?」
「えっ?」
後ろから声をかけられて振り返ると数人のガラの悪い男達が俺を囲んでいた。
確実に悪い予感がして一歩後ずさるとすぐに色とりどりの壁にぶちあたる。
これでは逃げようがない。
「金だけ巻き上げて許してやるつもりだったけどお前可愛いい顔してるな。」
一人が俺の腕を掴み、強引に引き寄せる。
下品な顔が近い。
背も高くて体格もよく、とても逃げ出せる見込みもない。
「なっ何だよっ!!触るなっ!」
抵抗しようとするともう片方の腕も違う男に拘束された。
「声裏返ってるぜ。かわい〜」
何で男なのにこんな目に合ってしまうのか理解不能だが、確実にこれからされる事は屈辱的な、何か。
最初に声をかけてきた男が突然俺のネクタイを解き、強引にシャツのボタンを外し始めた。
「何やってっ…やめろっ!!」
そして肌蹴たシャツの中に手を入れて肌をまさぐってきた。
ざらざらした手の平が肌に引っ掛かって痛いし、何より気持ちが悪い。
「なっ…さ、触るなっ!!嫌だっ!!」
これからされる事がリアルに想像出来てしまって恐怖で体がすくんでしまう。
そんな心情を悟られるのも屈辱的で精一杯口で抵抗するのがやっとだった。
嫌だ…ヨシュアっ…助けて…
どこにもいない彼を思い浮かべながら救いを求めても状況は悪化していくばかり。
俺の肌蹴た上半身は男達の前に晒されて、ベルトにまで手をかけられる。
後ろにいる男達が煙草をふかしながらゲラゲラと笑っていた。
最悪だ、恥ずかしくて悔しくて消えてしまいたい。
「何やってるんだい?」
不意によく知っている心地いい声がした。
ヨシュア?!まさかっ…
焦って声のする方を見ると、知らない青年が立っていた。
声や顔はヨシュアにそっくりなのに、知らないと感じるのは雰囲気や体格がまるで違うせいだからかもしれない。
すっかり俺が混乱しているうちに彼は俺を取り巻く男達に殴り掛かり、華麗に蹴散らしてしまった。
「ふう…疲れちゃった…大丈夫かい?」
すっかり体がすくんで座り込んでいた俺に、彼の大きな手が差し延べられた。
「ど…どうも…」
手をとると温かくて力強い。
俺の知っている柔らかくてしなやかな手とは大分違っていた。
やっぱりヨシュアじゃない、誰だろう…でも、他人なはずは…
「僕の顔に何かついてるのかい?」
唖然として見入っている俺に彼はくすっと笑って言った。
この笑い方、仕草、そっくりだ。
「…あの…ヨシュアのお兄さん…ですか?」
他人じゃなければ兄弟以外考えられない。
「え?!…フフフっどうかな。」
彼は不敵に笑いながら手慣れた手つきで俺の肌蹴たシャツのボタンを整え始めた。 
近付くとやっぱりヨシュアの香水の匂いがする。
目鼻立ちがはっきりしていて身長も思わず見上げてしまうほど高かった。
声は若干低くてハスキーなトーンが耳に心地いい。
「はい、出来たよ!一人でこの辺りを歩く時は気をつけないと。今日はもう帰りなよ、僕はまだやる事があるから…」
「あっ…ありがとうございました…あの、名前は…」
つい、どこかへ行こうとしていた彼の手を掴んで引き留めてしまった。
このまま別れるなんてやっぱり色々と腑に落ちない。
「名前?何言ってるんだい…桐生、だよ。」
「じゃあやっぱり、ヨシュアの…」
「…ヨシュアに聞いてみるといいよ。じゃあね。」
去り際の彼はどこか切なげな表情をしていた。
遠くなる後ろ姿はすらりと背が高くて広い背中はどこか暖かかった。
かっこいい…セクシーな大人って感じだ。
ヨシュアが大人になったらあんな感じになるのかもな。
俺の胸は異常に高鳴っていた。
胸がきゅっと切なくなって暫くその場所から動けない。
強い憧れに似たあの感情。まさか、恋なんて…そんな事あるはずない。
俺にはヨシュアが…。 
否定するように首を横に振って少し頭を冷やしてみた。
胸の奥に熱くて甘い何かが疼き出しているのを必死で気づかない振りをして家路についた。










「羽狛さん!聞いてよ!!」
僕はショックと嫉妬ですっかり興奮していて、行き先は当然良き理解者のところだった。
「ど、どうしたんですか?!」
コンポーザーの監視役兼CAT、時にはワイルドキャットのマスターであり社会科の教師でもある羽狛さん。
僕の唯一の理解者で、唯一何でも話せる相手は彼しか居ない。
「この姿に戻ってる時だけ敬語使うのいい加減やめてくれるかい?」
「あ、あぁそうでした…で、どうしたんだ?そんなに興奮して。何かあったのか?」
「羽狛さん、酷いんだよ…ネク君ったら!」
ネク君という名前を出した途端羽狛さんの表情から緊張感が失せていった。
僕が相当取り乱していたからコンポーザー関係の何かだと思っていたらしい。
ネク君との事だって以前羽狛さんを半殺しにしたくらい重大な事なのに、既に彼は話半分で聞く体制でいる。
「ネクがどうしたって〜?」
一端作業を止めていた手を再び動かしながら彼は僕にコーヒーを入れてくれた。
その香りに少しだけ落ち着きを取り戻した僕はコーヒーを片手にさっきの出来事を羽狛さんに話し始めた。
「ネク君ったら、僕がちょっと姿が変わっただけなのに名前教えて下さいなんて言い出すんだよ…失望したよ、僕あんまり愛されていないのかな…」
「お前の存在はあいつらの常識じゃあ測れないからなぁ。仕方ねぇよ。」
そう、それだけならまだ可愛いものなんだよ。
後で正体を教えてびっくりさせようと思ったのに…
「あの時のネク君の目、僕じゃないって思っていながらまるで恋焦がれる様に僕の事見てたんだよ。」
たまに羽狛さんを見る時もあんな目をしていたっけ。
強い憧れの目、でもあの時のネク君はそれだけじゃなかった。
本当に恋に落ちた様な…あんな顔僕の前じゃ、まずしないのに。
「自分で自分に嫉妬してりゃあ世話無いぞ。いいじゃねえか、どっちもお前なんだし。」
分かってる、本来の姿の僕に惚れられるのだって勿論嬉しいんだけど…
複雑な心境だよ。
「問題は僕がいながら、僕って気づいてない大人の男に恋してるって事だよ。」
「よく分からねぇなぁ〜」
羽狛さんは半ば呆れた様にため息を吐いた。
「羽狛さんには僕のナイーブな恋心が分からないんだよ!これだから汚れた大人は嫌だよ。」
「……(自分だって十分汚れた大人だろ…はぁ、次のレポートに何て書いたらいいんだろう。)」
理解はされなかったけど羽狛さんに話をして少しだけ気が楽になり、僕は大分落ち着きを取り戻した。
羽狛さんには良く分かって貰えなかったけど、ややこしくなる前にちゃんとネク君に正体を話した方が良さそうだね。
僕の本当の姿を知ったらネク君はどんな顔するのかな…
もっと僕の事、好きになってくれるかな。
丁度明日はネク君と学校で会える日だ。



一週間ぶりの登校という事でクラスの女の子達が心配して僕に纏わりついてきた。
子供に興味なんかないし僕にとっては鬱陶しいだけ。
でもネク君だけは特別だけどね。
ネク君より早く登校した僕はまだ空席の隣の机を眺めていた。
早く君に会いたい。
早く体に触れたいし、えっちな事いっぱいしたいよ。
「ヨシュア!!来てたのか?!」
邪まな事を考えていた所為で突然の恋人の声に一瞬驚いてしまった。
「ネク君!フフフ♪おはよう。」
僕と会えたのが嬉しかったのかネク君は朝からご機嫌そうだ。
「会いたかったよ、ネク君。」
本当は昨日も会ったけどね。
「お前、兄弟いたんだな!!お兄さんに昨日会ったんだ!大人でかっこいいな、お前のお兄さん。」
「……え?」
ネク君にとっては久しぶりの僕との再会だというのに開口一番が他の男の話だなんて。
正直それが自分の事だとはいえ、一瞬ショックで目の前が真っ暗になった。
次第に嫉妬がじわじわと湧き上がってきて、嬉しそうなネク君の表情すら昨日の自分に対してのような気さえしてくる。
現に大人の僕の話をし出したネク君は、またあのキラキラした羨望の眼差しをしていたから。
「…そう、よかったね。」
何だか面白くなくて正体を話すどころかネク君の目さえまともに見たくなかった。
ネク君は僕の機嫌が悪くなった事を察したのか不思議そうな顔をしていた。


放課の時間も相変わらず嫉妬は引きずっていて、忙しく電話をする振りをしてネク君を避けてしまった。
そうこうしている内に昼休みがやってきた。
「ヨシュア、行こうぜ。」
ネク君がいつもの場所へ僕を誘う。
まだ僕の機嫌を伺うような顔をしていた。
そんな気遣いに少しだけ自分の子供じみた行動に反省してしまう。
「いいよ。」
僕が承諾するとネク君は少しほっとした顔をした。
ちょっとだけ胸がちくっと痛かった。

屋上に続く階段の踊り場はいつの間にか二人のお気に入りの場所になっていた。
僕はここに来るとどうしてもネク君との色々な甘い出来事を思い出し、性急になってしまう。
僕も大人なんだし一先ず嫉妬は抑えて、ここはネク君との久しぶりの甘い時間を楽しむことにするよ。
拙い話をしながら昼食を終えると、突然ネク君が切り出した。
「なぁ、お前お兄さんの事嫌いなのか?その、さっき何だか嫌そうだっただろ?」
折角和んだ僕の空気にネク君が一気に水を注す。
「…別に嫌じゃないよ?ネク君こそ彼の事どう思ってるの?」
僕は一体何を聞いているんだろう。
これじゃあ嫉妬丸出しだね。
当然ネク君は驚いたように目を丸くして…と思ったらどうやら相変わらず相当な鈍感みたいだ。
「え?かっこいい人だと思うな。俺あの人に助けて貰ったんだけど、強くて優しくて…って、ヨシュア?!」
僕の嫉妬に気付きもしないでネク君はまた目を輝かせながら昨日の話をし出した。
そんなネク君を見ていたらいい加減僕の中の理性の糸が切れて気がつけばネク君を冷たい床に組み敷いていた。
「…久しぶりなんだし、いい事しようよネク君。」
僕と一緒にいるのにどうして今の僕を見てくれないの?
そんな苛立ちと嫉妬がごちゃ混ぜになって生まれた真っ黒な感情が、抑えていた性欲に火を付けた。
君のそんな顔は見たくない、僕の事だけ考えさせてあげるよ。
「ちょっ…いきなり何やって!ヨシュアっ…う…」
ごちゃごちゃと煩いネク君の口を無理矢理キスで塞いだ。
自分の欲求だけを押し付けるような乱暴で激しい僕のキスにネク君の喉が苦しそうに唸る。
一方的に舌で口内を掻き回しながら何度も唾液を注いでいった。
当然ネク君は飲みきれなくて、口の端から溢れた唾液が首筋までべとべとに汚していく。
「う…んっ!」
ネク君は苦しそうに何度も僕の背中を叩くけど、止めてあげないよ。
制服のズボンの上からネク君の股間を適当に撫で回して無理矢理勃起させると、恥ずかしそうに膝を閉じようとしている。
ベルトを外して出来た隙間から下着の中に手を突っ込むとネク君のペニスはもう先走りでぐっしょりと濡れていた。
自慰とかしてなかったのかな…どうしよう、久しぶりだしこんな無理矢理なセックス、興奮しちゃうよ。
まだ2、3回しかネク君とセックスしていなかったけど、いつも大事にゆっくりと気持ちよくさせてあげていた。
でも本来僕は少しサディストだし、いい大人の僕がいつまでもあんなセックスだけで満足出来るはずもない。
まっ黒い感情も手伝って僕の独りよがりの性欲は完全に暴走していった。
「んっ…あっ!ヨシュアっ…やめろっ…」
いつもと様子の違う僕のセックスにネク君は完全に怯えていた。
本気で嫌がる目が余計に僕の加虐心を煽る。
ズボンを無理矢理引き剥がしてネク君をうつ伏せにさせると、抵抗させない為に両手を僕のネクタイで拘束した。
「フフフっ、どうだいネク君。たまにはこんなプレイも興奮するだろう?」
後ろから耳元に囁くとネク君の耳はカッと赤く染まった。
案外嫌じゃないんだね、ネク君はマゾっ気があるのかな。
「へんたいっ…だな…おまえっ…あっ!」
ネク君の腰を持ち上げてお尻の肉を割り開き、入り口をぺろぺろと舐めてあげた。
昼間から学校で、しかもこんな体勢で僕にこんな事されているなんて。
なんて卑猥な光景なんだろう。
ネク君もそれを分かっているのか恥ずかしそうに肌がどんどん赤く染まっていく。
「ふっ…も…やだっ…ヨシュアっ…」
そんな切ない声を出されたら余計に止められないよネク君。
内部に唾液をたくさん注いで指を入れて中をぐずぐずにすると、性急にそこに自分の亀頭を押し入れた。
「いった…やめっ…あっ!!」
一気に奥まで力強く貫くと、そのまま容赦なく律動を繰り返した。
「んっ…ネク君っ…フフっ気持ちいいよ」
指を食い込ませるようにお尻を鷲掴みにして後ろから何度も犯した。
初めてネク君とするバックからの体位に僕の征服欲は激しく満たされていく。
ネク君は僕のものだよ、君は目の前にいる僕の事だけ考えていればいい。
手首に結んだネクタイを解いてネク君の両手首を掴むと、そのまま勢いよく僕の方に引っ張った。
ネク君の体は膝立ちのまま上半身だけ反り返って、後ろから僕に犯されている。
なんてえっちで支配的な体位なんだろう。
「ハァっ…ネク君っ!」
僕の興奮は最高潮に達し、それが強い快感を生み出してネク君の中に溜まっていた精液をどくどくと注いだ。


「最低だな…。」
着衣を整えて冷静になってみると、みるみる後悔の念に苛まれていった。
嫉妬の勢いとはいえちょっとやりすぎちゃったよ。
「そんなに怒らないでよネク君。」
「変態っ…」
何を言ってもネク君は悪態をつくばかり。
でも元はと言えば悪いのは君の方なのに!
それから当然だけどネク君は一言も口を利いてくれなくて、気まずいまま別々に下校した。
折角久しぶりにネク君と学園生活を楽しもうと思っていたのに、台無しだね。
子供の姿の時は頭の中まで若年化してしまうのかな、ってくらい今日の僕は子供じみていた気がする。