未だに痛い下半身に気持ち悪い違和感を感じながら一人、学校を出た。 最低だ!…ヨシュアなんてっ… 突然された乱暴な行為、思い出すだけで恥ずかしくて顔から火が出そうだった。 しかし同時に下半身が熱で疼いていく。 最低なのは俺の方だ。 あんな事されたのに、すごく興奮していた。 ヨシュアの強い独占欲を叩き付けられたようで少しだけどきどきしてしまったんだ。 ああ、俺Mなのかな… それでもやっぱりあんな扱いをされて許せないものは許せない。 屈辱感だけは未だに拭い切れなかった。 何で俺たちはこうも空回りしてしまうんだろう。 機嫌が悪かったヨシュアの気持ちなんて全然分からない。 理解しあえない寂しさを抱えて今日も人の多い渋谷の街に向かった。 また会えるなんて期待はしていないけど… 昨日あの人と出会った場所、あの鮮やかな壁の元に行けば何かが開けるような気がした。 既に辺りは夕暮れで、濃いオレンジの混ざったグラフィティは暖かく懐かしいような表情を見せる。 手を差し伸べると夕日の熱を含んだ壁は少し暖かかった。 あの時の手の平みたい。 「…今日も来てたのかい。」 はっとして振り返るとほっそりとしたフォルムの背の高い一人の男性。 逆光で表情はよく読み取れないけれどそれはあの人だと分かった。 少し低めの落ち着いた声、銀色の髪は日の光を透かしていて金色に輝いて見えた。 「あ…」 胸がきゅっと苦しくなる。 心拍数がぐっと上がって体が熱くなっていくように感じた。 どうしていいか分からず俺が立ち尽くしていると彼が俺の頬に手を添えた。 あったかい… 「どうしたんだい、そんな顔して。」 そっちこそ、と言いたいくらい彼も切ない表情をしている。 「…友達と上手くいかなくて。」 情けなく笑って見せると彼は俺の心まで覗き込むみたいに真剣な眼差しで俺を見据えた。 「本当に友達なの?」 彼の表情は変わらない。 けれど友達と言ったのが嘘だとでも言うようにその口調は少しだけ強くなった。 「え…その…か、彼女…です///」 彼氏、なんて言える筈もなく、ましてや弟さんと付き合ってますなんてとても言えない。 すると彼はくすくす笑い出してやっと穏やかな顔を見せた。 「フフフっ、彼女か。うん、悪くないね。その子はどんな子なんだい?」 どうして知り合ったばかりで彼女の事なんか聞きたがるんだろうと不思議に思ったが、 なんとなく前から知っているようなその空気に俺は素直に心を開いた。 「すっごく我侭で、いつもあいつの機嫌に振り回されっぱなしで…でも、たまに結構優しいんだ。」 「ふぅん。君に愛されてるんだね、その子。フフ、よかった。」 何がそんなに嬉しいのか彼ははにかむ様に笑っている。 黙っていると大人っぽいのに急に優しい笑顔で笑い出すものだからまた俺の胸が高鳴った。 心臓がどきどきして呼吸が少し苦しくなる。 「…でも、僕の前でそんな顔してたらその子が悲しむんじゃない?」 「えっ?!」 心臓が一際大きく跳ね上がる。 そんな顔って、どんな顔してるんだよ俺!! やっぱり俺の心見透かされているんじゃないか、なんて焦っていたら彼が体を屈めて俺に顔を近づけてくる。 なっ何考えてっ!! 彼はキスするかしないかくらいのぎりぎりの距離でじっと俺を見詰めてきた。 柔らかい銀色の前髪が鼻先に掠めてくすぐったい。 「どうしたの?逃げないとキスしちゃうよ?その子が好きなんでしょ、裏切るのかい?」 そんな事を言われても、何故か顔が反らせなかった。甘い緊張感が俺の体を硬直させ、いけないと思いながらもどこかその先を期待している。 こんなときめき、あいつを思い出してしまう。 この人がヨシュアに似てるせいだ、だからこんなにドキドキして… 逃げ出せない事をそう自分に言い訳した。 「ねえ、キスしちゃうよ、どうするの…」 そう言われてきつく目を閉じたのは顔が近くて恥ずかしかったからなのか、キスを承諾したからなのか。 「…悪い子だね、君は」 すると唇に柔らかいものがそっと触れて大きな腕にすっぽりと抱きしめられると、角度を変えてまた深く口付けられた。 息を吸うために開いた隙間から彼の舌が入って来て円を描くように舌を舐められる。 濃厚なキスに頭がくらくらして砕けそうになった腰を強い腕でがっちりと支えられた。 「…う…っ…」 キスは次第に激しくなり、不思議と何かの強い感情をぶつけられているように感じた。 この味、キスの仕方、ヨシュアみたいだ… 勿論ヨシュアしか知らないのでキスとはこういうものなのかな、と思った。 体が密着していて俺の腹の辺りにある彼の股間が当たる。 「…っ///」 勃っている事に気付いてしまい急に凄く恥ずかしくなって彼のシャツを引っ張ってやめるように催促した。 それでも離して貰える気配は無く身長差で上を向いている顎がいい加減疲れてくる。 「ハァっ…あ///…」 やっと解放された頃には首も、後ろに反り返っていた腰も限界だった。 身長差があるキスは大変みたいだ。 キスの余韻がすぐに抜けなくてふわふわした体がよろけると、すかさず腕に抱き留められた。 何か思い詰めたような、悲しげに揺れる彼の瞳と視線がぶつかる。 「…今どんな気持ちなの?」 「…え?」 突然そんな事を聞かれると思わなかったので返事に詰まった。 今の俺の気持ち… 改めて考えるとヨシュアへの罪悪感が少しずつ沸き上がってくる。 「…彼女より僕の方が好きになった?我侭な彼女はもう嫌い?」 「え?…そんなっ…何言って…」 彼の表情は強張っている。突然そんな事を言われても…自分でも自分の気持ちがコントロール出来ないのに。 「ちゃんと答えてよ、分からないなら体に聞いちゃうよ…」 「えっ?!…あっ…駄目っ…」 耳元で囁かれて掛かる息の感触に背中がぞくぞくした。 そして彼の手が俺の腰やお尻を優しく撫でるとそのまま股間に触れる。 びっくりして思わず腰を引くと強い腕にがっちりと捕まえられてしまった。 「フフ、もう勃ってるの?えっちな体してるんだね。誰のせいなんだろうね…」 「う///…や…」 そんなの決まってる、あいつのせいだ。 ズボンの上から股間を何度も擦られて、今日ヨシュアにイかせて貰えなかったそこはみるみる固くなった。 先走りの液が滲み出て濡れた下着が張り付いて気持ち悪い。 出会ったばかりの人とこんな事してしまうなんて。 ヨシュアへの罪悪感で胸がちくちくと痛む。 それでも逃げ出せないのは何故だろう。 さっきから彼が見せる切ない顔を見ていると愛しい感情が湧いてきて、抵抗が出来ない。 すると彼は俺のベルトを外し、その隙間から胸に手を差し入れてきた。 「んっ…」 乳首に触れられて思わず声が漏れた。 ヨシュアよりも大きな指が少し乱暴に乳首を擦る。 ヨシュアの愛撫よりも少し違ったその感触に思わず甘いため息を漏らした。 「…感じてるの?僕が誰かも分からないのに?」 まるで俺を責める様な口ぶりに少し不安を覚える。 そっちこそ、俺の事知らないのに。 でも見えない何か絆のようなものを感じているから、こんな事をしているんだろう。 それが何なのかはわからないけれど… 片方の手で乳首を触りながら彼の手が下着の中に進入する。 「や…だ//」 勃起したものを直に握られて、阻止しようとした力無い俺の手は添える程度になってしまった。 「濡れてる」 恥ずかしい状態を指摘されてかぁっと顔が火照る。 彼の指が液を塗り付けるように濡れた小さい鈴口を触った。 「あ…」 快感が湧き上がり、立っていられなくて思わず彼に寄りかかった。 するとカチャカチャとベルトを外す音がして、彼が自分の猛ったものを取り出した。 その大きさに思わず凝視してしまう。 「…そんなに見ないでよ」 「え//」 彼のペニスを見たらこれからする事がリアルに感じてきて急に逃げたくなった。 こんなこと、あのプライドが高くて人一倍独占欲の強そうなヨシュアが許すはずがない。 戸惑っていると彼が俺の手を取って自分のものに誘導した。 「触ってよ。」 「え…あっ//」 そして俺のペニスをその大きな手の平に包み込み先走りを滑らせて扱いていった。 「んぁ…ぁ…」 痺れのような快感に膝が震えて腰が砕けそうになる。 俺が再びよろめくと腰を強く抱き留められた。 快感で上せた頭はもう理性が働かなくていつの間にか俺の手は彼の陰茎を扱いていた。 お互いを一緒に触り合うなんて、まるで自慰を手伝っているみたいで何だか凄くいやらしい。 彼のペニスはどんどん大きくなり指で作った輪に収まりきらなくなってくる。 「あっ…もう…俺っ…」 限界はすぐに訪れてしまい潤んだ目で彼に訴えると根元をきゅっと握られてしまった。 「まだだよ、僕のもっと触って。」 快感が限界ぎりぎりのところで留まってしまい、甘い拷問のように苦しくなる。 もう本能だけで行動している俺は早く熱を解放されたくて必死で彼の大きなペニスを愛撫した。 「ん…両手使って…」 とても片手じゃ愛撫しきれなくて、ずっと服を掴んでいたもう片方の手で根元を触る。 両手で扱いてあげると彼が甘い溜息を漏らした。 「ハァ…んっ…もういいかな…」 彼の根元が固く張り詰めてきて射精の準備を始める。 ついでに俺のも再び強く扱かれて、焦らされていた分の激しい快感に見舞われる。 「あっ、あ!!…よしゅ…あっ」 「っ…ん!」 二人分の精液が飛び散って服を汚していく。 アスファルトに白い無数の液溜りが散らばっていった。 彼が黙って俺の制服に付いた精液をハンカチで拭き取っていく。 その表情は暗く、眉間に皴が寄っている。 なんか、怒ってるのかな… ついヨシュアの名前なんか出してしまった所為だろうか。 でも…第一この人の名前だって知らない。 彼は二人の服をひとしきり綺麗にすると、その汚れたハンカチを丸めて地面に捨てた。 「もうこれはいらないよ…。」 はき捨てるように彼が言う。 「えっ?」 訳が分からず慌ててそれを拾うと彼が背中を向けて去っていくのが見えた。 すでにあたりは薄暗くて、空の下のほうだけが濃いオレンジ色。 彼の背中もすぐに黒色に馴染んでいった。 「また、待ってます!明日も明後日も…俺、あなたの事、もっと知りたい!」 聞こえているのは分からないけれど俺は何か必死になってその消えゆく後姿に叫んでいた。 彼が何か分からないけれど怒っているような気がして胸が苦しくなった。 同時にヨシュアを裏切ってしまった後悔が湧き上がってきて、色々な悲しみがごちゃごちゃに混ざって涙が流れてくる。 俺はなんて馬鹿で最低なんだろう。 きっと彼も呆れてしまったに違いない。 ヨシュア、ごめん…俺なんかもう、お前に相応しくないな。 俺の心の中みたいに辺りは闇に染まっていった。 彼に恋している事に気づいてしまい、こんなに重い恋心を二人の人間に抱いてしまう自分を、その運命を呪った。