僕達はコンポーザーと代理人。
最後にゲームでこの関係に終止符を打つ事に決めた。
決めたのに…
君は絶望しながら銃をゆっくりと下ろした。
震えながら涙を流してこんなに酷い僕をまだ嫌いになれないの?
優しいネク君。
そんな姿を見たら決心が鈍ってしまう。
「俺の事っ…騙してたのか?…好きって言った事も…」
僕が沈黙で答えるとネク君はますます地面に突っ伏して泣いてしまった。
僕だってまさか自分が代理人にこんな気持ちを抱くなんて思わなかったよ。
最初は単なる興味でキスをして、その反応が面白くてもっと色々していたらいつの間にか僕の方がその行為に溺れていた。
そして次第に僕の世界はネク君に塗り替えられていった。
だから、決心したんだよ。
君と僕が出逢った大切なこの街を残したい。
短い二人の思い出を忘れないように。
「ネク君…」 
悲しみに打ちひしがれるネク君にそっと触れるとびくんと体を震わせた。
「うっ…お前なんかっ…嫌いだっ」
憎しみの言葉を吐き捨てていてもその瞳は僕を縋るように見詰めている。
まだ希望を捨てていない真っ直ぐな瞳。
そんな目にこんな汚れた僕を映さないで。
今更僕はネク君を巻き込んでしまった事を後悔していた。
君をこんなにも傷付ける結果に終わってしまった事も。
だから償わせてくれるかい?
僕は代償に一生消えない傷を負う事にするよ。


それは君という大切な宝物を手放す事。


「…ネク君お別れだね。」
「…え?」
ネク君の目が大きく見開く。
自分は今そんなに驚く様な顔をしているんだろうか。
「うっ…ヨシュア…?」
泣き続けるネク君を強く抱きしめた。
この細い体やまだ幼い体特有の温かい体温、背伸びしてつけている香水の香り。
全部二度と忘れないようにしっかりと五感に刻み付けた。
「っ離せ!!…お前なんかに触られたくないっ…」
憎まれ口を叩きながらも震えた手を僕の背中に回してくる。
こんな僕をまだ想ってくれているなんて…
嬉しい反面そんなに好きにさせてしまった事にまた一つ罪悪感を覚える。
もうすぐ、もうすぐ僕は君の前から消えるから、君を解放してあげるからね…
だから最後にもう一度夢を見てもいいかい?
抱きしめていたネク君をそっと離して涙を指で拭うと、興奮して真っ赤になったその唇にキスをした。
「ふっ…うっ…」
まだ嗚咽混じりの吐息がネク君の口から漏れる。
最初は僕の胸を軽く叩いて抵抗していたけれど次第に諦める様に大人しくなった。
キスをするとびっくりして目を硬く閉じるところや、キスの呼吸の仕方が解からなくて苦しくなると僕のシャツを引っ張る仕草が大好きだった。
そんな小さい事が今になってこんなに愛しく感じるなんて…
この柔らかい唇も、もう最後にしなくてはね。
僕たちは顎が痺れるくらい今までで一番長く優しいキスをした。
言葉では何も伝えられないからキスで何度も何度もごめんねって伝える様に舌を絡ませて吸い付いた。
「ハァっ…もうっ…こんなの嫌だぁっ!」
名残惜しく唇を離すと開口一番にネク君の罵声が飛んで来た。
胸がずきんと痛んだが、行為を止める気はなかった。
ごめんねネク君、僕最後まで諦めが悪いんだよ。 
「あっ!やめろっ…嫌だっ!」
ネク君を無理矢理冷たい床に組み敷いて強引に上着を剥ぎ取った。
一週間前に僕が散々付けたキスマークはもう無くなっていて、まるでネク君の中から僕が忘れ去られた様で酷く寂しい気持ちになった。
ネク君が僕を忘れても僕がつけた証はずっと残っていればいいのに、なんて思いながら皮膚の薄い鎖骨辺りに強く吸い付いて濃い赤をたくさん散りばめていった。
「ふっ…ううっ…」
ネク君は泣いていて抵抗する気力も無いらしい。
よっぽど僕とのセックスが嫌なのか、この裏切られた状況が嫌なのかどっちなんだろう。
前者だったら大分ショックだよね…
しかし二人だけの時間は後僅かしかなかった。
ネク君を宥めている余裕なんか無くて僕はひたすら行為を続けた。
僕のお気に入りの小さくて可愛い乳首にちゅっとキスをして舌で転がすと、すぐにぷっくりと硬く腫れてピンク色が濃くなっていく。
「ふっ…あっ…」
すすり泣いていた声は少しずつ熱っぽくなっていき可愛い喘ぎ声に変わっていった。
もう片方も一緒に親指の腹で押し潰す様に愛撫してあげると、胸の薄い皮膚が上気して赤く染まっていった。
初めての時擽ったそうに身を捩っていたネク君。
あの時の君みたいに今の扇情的な君も懐かしくなってしまうのかな…
僕が大切に大切に開発していった体は期待に応えるように反応してくれて、ネク君の下半身はきっと本人の意思に反して感じてしまっていた。
ベルトを外して隙間から下着の中に手を差し込み勃起しているネク君のペニスを扱いてあげる。
逃げるように腰を捩っていたけれど次第に快楽に従順になっていき、ネク君のペニスは先走りを零してもっともっとと手の中で膨らんでいった。
僕と離れていた一週間恐らく自慰もしていなかったのだろう。
薄い液が僕の手を汚してくちゅくちゅと音を立てるほど溢れてくる。
ネク君のこの幼くて可愛い性器にもお別れをしないとね。
脱力したネク君はあっさりと下の服を脱がせてくれる。
もう抵抗する気は全く無いみたいだ。
感じているネク君の肌はじんわりと汗ばんでいて、しっとりと僕の手に吸い付いてくる。
感じている時の肌の感触を覚えておきたくて、太腿を擦りながら膝にちゅっとキスをした。
ぷっくりしたふくらはぎに頬擦りして内側の柔らかい肌にまた僕の証を刻み付ける。
未練がましい僕の愛撫にネク君は薄々僕の心情を察しているのだろうか。
さっきまでわんわんと泣いていたのに今度はしくしくと静かに泣きながら素直に僕に体を開いてくれている。
お互い言わなきゃならない事がたくさん在る筈なのに、二人とも冷たい床の上でただ黙って体を重ねていた。
それでも痛いほど気持ちが伝わって不思議な感覚に陥った。
これが僕達の絆なのかな。
この絆を大切に思えば思うほど僕の罪は重く圧し掛かってくる。
ネク君の腰を折り曲げて太腿を大きく開くと、晒された肛門が僕を待ち侘びる様にひくひくと収縮している。
周りの柔らかいお尻の肉を揉みながらそこにもまた赤い痕を付けた。
そして入り口がべたべたになるまで舐めて穴に舌を入れるとネク君の膝がぷるぷると震えた。
「ん…ふぁ…」
中にたくさん唾液を注いで指で掻き回すとぐちゅぐちゅと音を立てて僕の指に絡みつく。
ネク君はこの辺りがいいんだっけ、と初めて感じてくれた時の喜びを思い出しながら何度もそこを攻めた。
あの時はこんなところ恥ずかしいって暴れるものだから、中々上手く出来なくて少し痛い思いをさせちゃったっけ。
そんな可愛らしい思い出の一つ一つが今になって僕の胸を苦しめていく。
ごめん、ごめんね。
もう時間が来てしまう。
最後に僕も気持ちよくなってもいいかい?
指を抜いてそこにゆっくりと熱くなった僕を挿入した。
「あぁ!…んっ…や…」
衝撃に耐えるようにネク君が僕の背中に腕を回して肌に爪をくい込ませていく。
ちょっと痛いけど僕にも君の名残が刻まれていくみたいで嬉しかった。
ネク君、ネク君気持ちいいかい?
心の中で何度も名前を呼びながらネク君の中をひたすら擦り続けた。
「あっ…んっ…ヨしゅあっ」
泣き腫らした目を薄っすらひらいて虚ろな顔してネク君が僕の名前を呼んでくれた。
胸が張り裂けてしまいそうだった。
この大切な宝物が僕の手を離れていくなんて…
けれど悲しんでいる時間は無い。
だからこの一瞬一瞬を胸に深く刻み込んでいった。
柔らかくてあったかいネク君の体内や、イきそうになるとぎゅうぎゅうと僕を締め付ける入り口、焦点の合わないきらきらした虚ろな瞳。
どんな小さな仕草もずっとずっと覚えておくからね。
「はぁっ…あっ…もう…」
ネク君のペニスを触ってあげるとすぐに根元が硬くなった。
陰嚢が腫れあがっていてもうイきたがっているみたい。
最後くらい一緒にイきたいからネク君の根元をきつく握って少し我慢してもらった。
「ふっ…んん…」
ネク君は苦しそうに身悶えている。
耳元で小さく大好きだよ、と囁いてネク君にキスをした。
このまま繋がって溶け合ってしまえたら、なんて夢見ながら何度も唇を啄むとネク君がはらはらと涙を流した。
このまま離したくないよ、離したくない…
終わりを惜しむようにゆっくりと腰を動かしていても、ネク君の中が気持ちいいものだから僕もすぐに限界を迎えてしまった。
「ん…ネク君っ…」
激しく揺さぶりながら同時にネク君のペニスも扱いてあげた。
「ふあっ…あっ!!」
ネク君が気持ち良さそうに何度も体を震わせて射精する。
同時に僕も色んな想いと一緒にネク君の中にいっぱい注ぎ込んだ。
もう思い残す事はないや…
セックスなんて本当に一瞬だね。
出したら終わり、なんてなんだか虚しい。
本当は僕は終わった後に抱きしめて眠るのが一番好きだったりするんだけどね。
恥ずかしいから言わないけど初めてセックスしたあの後は、何だか嬉しくて嬉しくてどうしようもなくて一睡もしないで君の寝顔を見詰めていたんだよ?
これも大切な思い出だよ。
荒い呼吸をしながらぐったりと横たえてぼんやりと宙を見詰めるネク君。
半分意識が飛んでいるみたい。
ネク君に服を着せてあげて僕も身嗜みを整えると暫くそんなネク君を見詰めながら別れの時間を惜しんだ。
僕の付けた痕が消えるまでは僕の事覚えててくれるよね。
それが消えたら、もう忘れちゃってよ。
「ネク君…」
君と出逢った渋谷。
いっぱい買い物したお店。
よく通ったラーメン屋。
えっちな事した路地裏。
この渋谷がやっと好きになれたみたい。
この街が大好きな僕のネク君はまだ小さくて幼い。
僕の中のネク君はいつまでも15歳の可愛いままで止まってしまうけど、この街で君は他の誰かと恋をしていずれ大人になっていくんだろうね。
僕よりもいい男になったらどうしようかな…
「ヨシュア、行くぞ。」
天使の姿に戻った羽狛さんが僕を迎えにやって来た。
今の僕にとっては彼はさながら愛を引き裂く悪魔といったところだね。
仕方なく僕も本来の姿に戻る。
ネク君の側から中々足が離れられなくて胸に切なさがこみ上げてくる。
勇気を出して一歩一歩離れていった。
「…ヨシュア?」
今の僕の姿が見えるのだろうか、後ろから僕を呼ぶネク君の声がした。
振り向きたいけどそうしたらまた別れるのが惜しくなってしまうから後ろ髪引かれる思いで羽狛さんのところへ向かった。
「貴方でも泣いたりするんですね。」 
羽狛さんに言われてはっと気づくとはらはらと涙が流れていた。
「僕の泣き顔は高いよ?」
僕たちを光が包んでいく。
さっきまで腕の中にいたネク君がもうあんなに遠い。
その姿も光の中に少しずつ溶けていった。
僕のネク君が霞んでいってしまう。
嫌だよネク君…
寂しくて切なくて胸が今にも張り裂けそうだったけどネク君がこっちを見ていたから頑張って笑顔を取り繕った。
泣き別れなんて柄じゃなくて嫌だから最後はいつもの勝気な僕の笑顔を焼き付けておいてね。








ネク君さよなら。






鮮やかな世界は終わりを告げて再びモノクロに染まっていった






















全てが終わって何も無かったような顔して渋谷はそこにある。
それでも一つ変わった事は俺に友達が出来たこと。
みんなといると楽しいし新しい世界が開けていく。
この素晴らしい街とかけがえのない親友たち。
二つとも結果彼が残してくれた大切な宝物。
でも同時に失ったものはあまりにも大きかった。
代償に失った初恋と大切な人。
恐らくもう戻っては来ないという漠然とした不安に何度も苦しめられる。
体にはまだ彼の存在が鮮明に刻まれているというのに。
ついさっきの事のようにまだこの体は彼の熱で火照っているというのに。
その強く焦がれた彼というパーツが欠けたこの世界は果たして俺が望んでいたものだったのだろうか。




「ネクまたね〜」
「じゃあな!」
みんなと別れて一人雑踏に取り残されるとその風景は色のない絵画みたいにどこかつまらないものの様に色褪せていた。
たまに、残されたものと彼を天秤にかけてみたりしている俺は、なんて浅ましいんだろう。
人波に流されるまま一人で渋谷を放浪しているとつい彼の影ばかり追ってしまう。
よく似た後姿を振り返ってしまったり、彼との思い出のある場所に立ち寄ってみたり。
馬鹿みたいだ。
もう、いないのに。
胸が締め付けられるように苦しくなると、つい体を飾る鮮やかな刻印をちらりと確認してしまう。
そんな動作ももう半分癖のようになってしまった。
この印が消えたら俺はどうすればいいんだろう。
忘れてしまえば楽になれるのだろうか。
それでも最後のあの時の見た事もない悲しい顔をした彼を思い出すとそんな事は到底無理だと悟る。
あの泣き出しそうな顔、惜しむような愛撫。
あの時彼が犠牲に手放した物がどれ程大切だったか涙が出るくらい痛いほど分かってしまった。
馬鹿なヨシュア。
本当にこれが俺の望んだ世界だと思っているのだろうか。

お前は何も、分かってない。

俺を騙して利用した上にこんな大きな傷を残していくなんて…
俺はお前を許さない。
でもきっといつか気づいてくれると信じてる。
それまでずっと待ってるからな。
気の遠くなるような時間でも泣き出しそうな夜でも耐えてみせる。
お前がくれた限りない強さが俺の自信になって未来を照らしてくれる。


きっと繋がらないヨシュアの携帯にメールを一通送った。


世界は輝きを取り戻して俺は果てしなく遠い青空を見上げた。











END









最近甘すぎる傾向があったので悲しいヨシュネクを書いてみました。
ハッピーエンドではないのは珍しいなぁ。
その後は想像にお任せで。
ちなみにエンディングの皆様はやっぱりはぶかせて貰いました(笑)
あの場には居なかった、ということで!!!
しかし羽狛さんはヨシュアが大人になると敬語になるのはなんで???
いろんな妄想をしてしまう…
いまいち自己満な妄想解釈な小説ですが最後まで読んで下さってありがとうございました!
感想頂けたら小躍りして喜びます(笑)!!!