静かな階段に二人の談笑が響き渡る。
ふと会話が途切れ遠くに昼休みを堪能する生徒達のざわめきが聞こえてきた。
ヨシュアと再会してまだ半日。
未だに夢なんじゃないかとさえ思う時がある。
また俺の前から消え、過ごした時間すら嘘になってしまうのではないか。
俺の中に一抹の不安が過ぎった。
「…ネク君何考えてるの?」
階段で俺より一つ下の段に座っていたいたヨシュアが下から顔を覗き込んできた。
「フフフっ相変わらず変な顔♪」
よく、こいつは俺が考え事をしていると変な顔と言い出すが、
そんなに顔に出てるのか?
「うるさいなっ!いちいち余計だ!」
接近したヨシュアに少し緊張感を覚えた俺は慌てて顔を背けた。
改めて、さっきの此処での出来事を思い出すと意識しない方がおかしい。
「顔赤いよネク君?フフっ熱でもあるのかい?」
するとヨシュアは階段を利用して俺に馬乗りになってきた。
顔が近い!!
間違いなくまた何かされるのを察知した俺は身構えるように固く目を閉じた。
ヨシュアが近付くにつれ瞼の裏の闇が濃くなっていく。
心拍数が次第に上がっていくのを感じた。
「ん……」
唇が触れたと思ったら顎の角度を変えられ舌まで入れられる。
相変わらず俺は大口を開けて固まる事しか出来ない。
ヨシュアの舌はさっき飲んでいたコーヒーの味がした。
「ふ…っ…」
ヨシュアの舌が俺の舌を誘うように絡んでくる。
俺もなんかしろって事なのか…?
その誘いに乗る様に俺も舌を絡ませてみた。
あ…気持ちいい…
お互いの口内が溶け合う様な感覚。
すっかり緊張も解れ、キスに酔いしれていると俺の体はある感覚に支配されていった。
そう、思春期の男なら誰でも経験のあるあの…
ど、どうしよう…俺今絶対っ///
勃起している感覚。
戸惑った俺は慌ててヨシュアの胸を押し、キスを中断させた。
「…ネク君?」
ヨシュアは一瞬不可解な顔をしたが、
不自然に内股になっている俺を見て何かを察した様に嫌な笑顔を浮かべた。
「フフフっ…経験無いなら仕方ないよネク君。恥ずかしがる事はないんじゃない?」
はっ恥ずかしい////
しかもなんか嫌味な感じだ!!
こいつはデリカシーがないと言うか、空気が読めないと言うか!!
「…ほっとけば治る///」
そう言って俺は下半身を両手で隠し、ヨシュアの視線を逃れようとした。
「…知ってる?ネク君。勃起したまま放っておくと不能になるらしいよ?」
「えっ?!」
不能?よく意味が解らない…
何せ男の機能を初めて理解したのはそんなに遠い過去ではなかったので、
ヨシュアの言葉は俺に不安を抱かせるには十分だった。
「どうしたら…」
俺は目でヨシュアに助けを媚いた。
その助けがどんなものかも到底分からずに…
「ふぅ…仕方ないね、ネク君は。フフっ…じゃあ足を開いてみてよ?」
俺はヨシュアに言われるまま恥ずかしながらも足を開いた。
ヨシュアの言う通りにすればこの不安から逃れられると思ったから。
するとヨシュアは何を思ったか、突然俺のベルトに手を掛けるとなんとそれを外し始めたのだった!!
「おっ…おい!!」
慌てて阻止しようとしたが、ヨシュアの制すような真剣な眼差しが俺を躊躇させる。
「僕に任せないと大変な事になるよ。フフフ…」 
何か病気的なものになるかもしれない不安と、
これからヨシュアにされる何らかの行為に対する不安。
恐らくとても恥ずかしい事が待っているのは察知出来るが、
未知の行為に対するほんの少しの期待感が俺の抵抗を阻止した。
「い…痛い事とかするなよ?」
「フフフ♪」
ヨシュアはただ笑っただけで俺の不安に対する解答は返って来ない。
ベルトが外されチャックを下ろされると、
ヨシュアは制服のズボンとボクサーパンツに手を掛けてそれらを引き剥がそうとした。
「おいっ!まっ…!」
待て!!
と言いかけたが時既に遅し。
俺は勃起までしている全裸の下半身をヨシュアの前に晒す事になってしまった。
「見るな〜〜っ///」
片手で股間を隠しながらヨシュアに奪われた服を取り返そうとしたが、
それらは既に階段の下の方に投げ捨てられていた。
「往生際が悪いよネク君!じっとしてないと後でどうなっても知らないよ?フフっ」
思春期の少年にとって、知識の少ない性に関する不安ほど恐ろしいものはない。
その心理を上手くヨシュアに操られているような気もするが、
こうなった以上もうヨシュアを信じるしか道は残されていなかった。
ヨシュアは股間を覆っていた俺の手をどけると、その勃起した性器に手を添えた。
「フフフ♪ネク君あんまり大きくないんだね!」
「なっ!!うるさいっ!!////」
何てっ…何てデリカシー無いんだよ!!
しかし、男にとって1番屈辱的な事を言われても、
俺の股間は萎えるどころかヨシュアの手で更に感じていた。
ヨシュアが添えた手を上下に動かし始める。
「っ…!」
始めて他人に与えられる快感に思わず驚嘆の声を上げそうになったが、慌ててそれを飲み込んだ。
どうしよう…すっげー気持ちいい!!
「…ネク君、気持ちいいなら声に出しなよ?体に悪いよ♪」
そんな事言ったって!!
自分の口から想像もつかない声が漏れる気がして、
俺は両手で口を覆いながら必死で込み上げる声を抑えた。
しかしそんな努力を無駄にするようになんとヨシュアは先端を口に含むとそこに舌を絡ませた。
「っ!!…ん!!」
下半身から強烈な快感が波紋のようにゆっくり全身に行き渡る。
その未知の感覚に思わず俺は身悶えた。
「ぅ…っ…」
ヨシュア!!何してるんだよ〜!!!
これって!!これってフェラってやつか?!!
ヨシュアの顔があんな処にある事にもの凄く衝撃を受けたが、
その衝撃を簡単に打ち消してしまうほどその快感は未知数だった。
「っ…ん…ぁ…」
ついに理性を失いかけた俺は声を抑える事すら放棄しかかっていた。
すると突然予鈴が校内に響き渡った。



キーンコーン…



静かな階段でいつも以上に音が反響するように感じるのは感覚が敏感になっている所為だろうか。
すると何やら下の方でザワザワと人の声がした。
よく考えたら、この下の階は何かの準備室がある。
次の授業で必要な物を生徒達が取りに来たのだろう。
「ヨシュアっ…人が…!!もう…止めようっ…」
俺は咄嗟にヨシュアの頭を放そうとしたが、
ヨシュアは上目使いで俺の方を見ると、一層激しく陰茎を刺激した。 
「んっ!!…ぐ…っ…」
一際大きな声を出してしまい、慌てて俺は唇を強く噛み締めて声を殺そうとした。
下に人がいるのに!!
ヨシュアが止める気が無い事を悟った俺は仕方なく声や気配を殺す事に集中した。
それなのに下半身は俺の意志など関係なく絶頂を迎えようとしている。
「くっ…ぁ…」
ヨシュアは業ととしか思えないほど不必要に水音を立てながら舐めている。
そんなに音立てるなよっ///!!
バレてしまうのではないかという恐怖感ももはや絶頂だったが、迫り来る吐精感でそれはすぐに掻き消された。
どうしよう!!
イきそうだ…ヨシュアっ駄目だっ!!
離れろと言いたいが余計な声は出せない。
涙目で必死に訴えるがヨシュアはニヤリと笑うだけ。
もう…イクっ…
快楽の波で俺の思考が全て白紙になっていく。
「あっ!!…んっ…ぁ…」
全てをヨシュアの口に吐き出し軽い疲労感に襲われるが、
戻りつつある理性で否応なしに現状を把握させられた。
「おっお前っ///口っ!!飲んでっ////!!!」
信じられないっっ!!
なんとヨシュアは俺の出した精液を全部飲み干していた。
「…ネク君まずいよ…害も得もないね。」
ヨシュアは眉間に皺を寄せながら手の甲で口元を拭っていた。
「当然だろ///!!」
いつの間にか下の声は消え静寂を取り戻していたが、俺達の存在が気付かれていたかどうかは定かではない。
射精して正常な脳でよく考えると、
一連の行動がどうもヨシュアの確信犯的な臭いがするが余り深く考えないでおこう。
恥ずかしくてあまりヨシュアと目を合わせられなかった俺は、
着替える為に恥ずかしい格好で急いで服を取りに階段を駆け降りようとした。
「どこ行くのさネク君。」
しかしその行く手はヨシュアによって阻まれてしまった。
「どこって…さっさと着替えないと本鈴鳴るぞ!!授業に遅れる…って…おい!!」
俺の話を聞いていないのかヨシュアはまだ名残惜しそうに俺に絡みついてくる。
「…話…聞いてないだろっ…」
「トイレに行って手を洗ったとこまでは聞いてたよ。フフ♪」
またそれか…
「ねえネク君、君のあんな姿を見て僕が何とも思わないと思う?」
するとヨシュアは俺の手を掴むとそれを自分の股間に当てた。 
えっ?!これって////
「欲情しちゃったよネク君♪まさかこのまま帰れると思ってるの?」
「ヨシュアっ!もう無理っ…」
俺の意志とは裏腹にヨシュアは壁際まで俺を追い詰めると、再び熱いキスをした。
「んぅ…」




キーンコーン…




再びチャイムが階段に反響する。
キスを止めさせようと思い薄っすら目を開けると、
長い睫毛を伏せて真剣に俺の唇を貪るヨシュアのアップが視界一杯に広がった。
珍しく真剣なヨシュアの表情。
雪の様に真っ白なその肌はうっすら桃色に染まっていた。
どうしよう…授業間に合わないな…
つい可愛いいなんて思ってしまい、怠惰な思考が少しずつ俺の焦りを掻き消していく。
口の中に先程の俺の生臭い味が広がる。
しかし不思議とキスを止めたいなんて思わなかった。
「ふぅ…ん…」
キスをしながらヨシュアは俺の太腿や臀部を撫で回してくる。
擽ったい…
その優しい動きの手は次第に内腿に移動し、そして…
「んんっ…!!」
ヨシュア!!どこ触って!!!
その指は後孔に触れると暫く悪戯にそこを擽った。
慌ててヨシュアから顔を背けキスを中断させる。
「そんな事するなっ///!!!何考えてっ!!」
「フフフっ何言ってるのネク君?ネク君の此処に僕のを挿れないとセックス出来ないよ。」
「セっ///?!!」
男同士の行為の内容にも驚いたが、
それ以上にヨシュアと自分がこれからセックスするという事実に今更ながら俺は驚愕した。
キスは何度か交わしさっきはあんな事にまで及んでしまったが、
よく考えたら愛の告白の一つも交わした事ないのに…
それがいきなりセックスかよ////!!!
「無理だ!!絶っっ対無理っ!!!」
パニックになった俺はヨシュアを突き飛ばすと、
急いで階段に散乱した服を取り着替え始めた。
「ネク君そんなに照れなくても…」
勢いで尻餅をついたヨシュアがばつがわるそうに舌打ちしたのを俺は聞き逃さなかった!!
「照れるとかそういう問題じゃないだろ?!」
しかし順序がよければいいという問題なのか…
何かが足りない。
経験値不足の俺にはそれが何なのかは解らなかったが、胸に疼くこの痛みが少なくとも何かを悟っていた。
「どうせ今から授業に出ても間に合わないよ?ネク君、さぼっちゃおうよ。」
ヨシュアは俺を引き留めようと試みていたが、それを無視して俺は階段を駆け降りた。



ヨシュアが解らない…



教室に戻っても胸に残った小さな疼きは消える事はなかった。
そして隣は空席のままその時間は過ぎていったのだった。 
帰りのHRになってやっとヨシュアが戻って来た。
平然な顔をして席に座っているがこっちを見ようとはしない。
何だよ…まるで俺が悪い事したみたいじゃないか!!
「おい…ヨシュア?」
「何だい?」
ヨシュアは携帯をずっと弄ったまま空返事をしただけ。
先刻の行為を全く感じさせないクールな態度に俺は軽い寂しさを覚えた。
「もう帰るのか?」
何となくこのまま別れるのは後味が悪い気がして、ヨシュアの様子を伺った。
「この後は色々とあってね。僕もこう見えて結構忙しいんだよネク君。」
「そうか…」
その内容を聞いてもきっと自分には到底理解出来ないような気がして俺はそれ以上の深入りを止めた。
学校では普通の少年だけどきっと外では…
少しだけヨシュアとの距離を痛感させられた。
するとずっと携帯に視線を落としていたヨシュアが不意に顔を上げた。
「ネク君がさっきの続きをさせてくれるなら予定を放棄してもいいんだけどね♪」
「えっ?!」
突然放たれた言葉に俺の思考は停止した。
さっきの続きって…
もしかして///!!
「〜っ///無理だって言っただろ?!」
「ふーん…さてと、それなら僕は帰るとするよ。ネク君じゃあね。」
やけに嫌味の篭ったじゃあねを放つとヨシュアは静かに教室を去った。
なっ何だよあの態度!!
その後姿を見送りながら苛立ちと共にさっきの胸の痛みが更に締め付ける様に広がって行くのを感じた。