翌日ヨシュアの事を色々と考え、まんじりともしないまま朝を迎えた。 寝不足で重い体を引きずりながら学校へ向かう。 ヨシュアはまだ来ていなかった。 昨日の空気を引きずっていない事を祈りながら、 ヨシュアが入ってくるであろう入り口をずっと見詰めていた。 しかし、相変わらず隣は空席のまま既に二時間目を迎えた。 昨日までぴったりとくっついていた机は等間隔を保ち、整然と定位置に置かれている。 もしこのままヨシュアが現れなかったら… 時間が経つにつれネガティブな思考に汚染されていく。 「授業始めるぞ〜静かにしろよ〜!」 すると緊張感の無い声と共に、羽狛さんが入って来た。 羽狛さん…あの人がいるって事は… 羽狛さんの存在によってヨシュアがまだこの世界にいる確立が大分上がり、 とりあえず俺の不安は軽減された。 授業が半分ほど進んだ頃、閑静な教室に扉がスライドする音が響いた。 クラスメイト達が一斉にそちらを振り向き当然俺もそちらに視線を投げ掛けた。 「遅れてすいません。」 ヨシュア!!よかった… 思わず笑顔が零れそうになってしまったが、それを悟られるのが癪な気がして頬杖をついて誤魔化した。 ヨシュアは俺の隣に座ると、一息ついて鞄から教科書を取り出していた。 今日は教科書持ってるのか…そうだよな。 相変わらず離れた机に寂しさを覚え俺は視線を教科書に落とした。 羽狛さんの無気力な授業も教科書の文字もあまり頭に入っては来ない。 代わりにヨシュアが今日も携帯を弄っているのが少し気になってしまった。 授業中という事もあり特に会話も出来ないままその時間は過ぎていった。 休み時間。 昨日のわだかまりを忘れたように話しかけようと意気込んで俺は精一杯の笑顔でヨシュアに話し掛けた。 「ヨシュア、おは…」 一瞬こちらを向いたヨシュアだったが途端に携帯が振動し、 それを持って慌てた様にヨシュアは教室を飛び出していった。 なっ…何だよ!! 『もしもし♪』と陽気な声で応対しているのを聞いて、相手との仲の良さが推測される。 携帯ばっか触りやがって!昨日はあんなに喜んでたのに… 昨日と一転したヨシュアの態度に軽い焦燥感を覚える。 やっぱり拒んだ事が相当気に食わなかったのか? 俺の事なんかもう… しかしそもそも好きとさえ言われた事なんかない。 色々な行為から勝手に自分を好きだと憶測していたに過ぎない事を実感させられてしまった。 その後も休み時間の度にヨシュアは携帯を持ってどこかへ行ってしまい、 友達の居ない俺は一人で窓の外を見つめるしかなかった。 ある時間、ヨシュアが教室に戻ってくると数人の女の子が取り巻いていた。 外見からして派手で美形な奴なので当然と言えば当然なのだが、正直面白くない。 転校生という事で女の子達がヨシュアを質問攻めにしている。 見て見ぬふりをしていると、 「ネク君!」 ヨシュアが不意に話しかけてきた。 「え?!」 予想外の出来事につい大きく反応してしまう。 「フフフ♪彼は僕の親友なんだ。」 親友って…確かにそうだけど!! 女の子達の視線がこちらに集まってくる。 なんだか釈然としない俺は興味がないふりをして再び窓の外を眺めた。 昼休みがやってきた。 なんとなくあの場所に誘う勇気が無く無言のまま席を立とうとすると、 「ネク君!僕も行くよ♪」 浮かれた足取りでヨシュアが後を付いてきた。 よかった… 思わずほっと胸を撫で下ろしてしまう。 「ああ!一緒に行こうぜ。」 昨日と同じお気に入りの階段。 踊り場の壁にもたれながら並んで座り込み、食事を始める。 「全く、女の子達にはまいったよ。まあ僕の美貌だから仕方がないけどね。」 ヨシュアは迷惑そうにさっきの出来事を語る。 二人の空気はすっかり和み、昨日の雰囲気すら自分の勘違いなのかとさえ思ってしまう。 やっと訪れた二人だけの時間。 俺は小さな幸せを感じながら食事を済ませ、談笑を楽しんだ。 「今日お前休み時間ずっと電話してなかったか?」 さり気なく、けれど俺にとっては重大な質問を投げかけてみる。 希望に添う返答が返って来るとはかぎらないが、どこか安心したくてつい口にしてしまった。 「フフフ♪気になるの?ネク君。」 「べっ別に…」 「ネク君可愛いね。」 答えになってない!と突っ込もうとしたらその口はヨシュアによって塞がれてしまった。 「…っ」 まるでこのキスが答えだとでも言うように優しく、深くヨシュアの舌が口内を惑乱する。 前回舌を絡める事を学習した俺は、その動きに合わせる様に舌を動かした。 お互いの唾液が溶け合うように俺のわだかまりも少しずつ溶けていく。 「んっ…」 しばらく俺の髪に絡み付いていたヨシュアの指は少しずつ移動して、俺のネクタイを外しにかかる。 なっ///今度は何するつもりだよ… しかし若い好奇心は止められない。 俺は暫くヨシュアの行動を見守ってみる事にした。 ネクタイが解かれ、シャツのボタンが一つ一つ外されていった。 肌が露出するとヨシュアの手の平がそこを這い、その指先の冷たさに少し肌が粟立つ。 「あ…」 唇が解放されると今度は耳の中をヨシュアの舌が這い回った。 ゾクゾクと寒気に似た感覚に囚われるが、 決してそれは不快なものではなく寧ろ直接脳が揺さぶられるような心地いい快感だった。 「っ…ん…」 「ネク君の耳あんまり見た事なかったけどいい形してるね。」 今の敏感な俺には耳元で囁く声すら快楽に摩り替わり、思わず甘い吐息が漏れるのを慌てて阻止した。 一方で俺の肌をまさぐっていたヨシュアの指は、 一連の行為に反応してしまった乳首に到達するとそれを指で摘み圧力を加えながら愛撫し始めた。 「ぁ…どこ触って…」 初めてそんなところを他人に触られ全身が竦む様な感覚に囚われたが、 間もなくそれは甘い疼きに変わり全身を駆け抜けていった。 「…ハァ…ん…」 耳が開放されヨシュアの顔が胸へと降りてくる。 柔らかい銀髪が鼻先を掠め少し擽ったい。 次の行動が大体予測できた俺はその衝撃に備え固く唇をかみ締めた。 「ぐっ…ふ…ん…」 予想道理ヨシュアはもう一方の腫れた乳首に舌を這わせ丁寧に舐め回した。 両方の乳首を別々に愛撫されもどかしさで腰が疼く。 何だこの感覚…!! 女の子でもないのに乳首で感じてしまう自分に酷く驚いたが、 これもヨシュアのテクニックの所為だとつい関心してしまった。 当然その反応は下半身に伝わり下着の湿った感覚が酷く不快だった。 「ネク君勃ってるよ…」 「っるさい…」 ヨシュアは俺の乳首に吸い付きながら器用にベルトを外すと俺のズボンと下着を取り去った。 どうしよう…気持ちいい… けど…!! 今更流されている自分に気が付いてもう後には引けない事を悟ってしまった。 ヨシュアは俺の勃起してしまったそれを手に取ると、先走りを指で掬い頭部に塗りこむように愛撫する。 「うぁ…あ…」 思わず体が仰け反り、噛み締めていた唇は解放されそこから断続的な嬌声が漏れた。 ヨシュアは俺の陰嚢を揉みしだきながら濡れた陰茎を扱いていく。 だめだっ!!こんなに早くっ!! 「ヨシュアっ!俺…もう…!」 俺は即効で吐精感に見舞われその旨をヨシュアに伝えたが、 ヨシュアは止めるどころかより射精を促すようにその口で腫れ上がった亀頭を咥え込んだ。 「あっ…イっ…く!」 俺は体を震わせながらヨシュアの口に数回に分けて精液を吐き出してしまった。 「ハァ…駄目だな…俺…」 またしてもヨシュアの口を汚してしまった事に少なからず罪悪感を覚える。 「うーん…やっぱりまずいよネク君…」 しかし口にした内容とは裏腹にヨシュアは満足そうに微笑んでいた。 気だるい体とは逆に脳は正気を取り戻し、自分の姿があまりに淫らな事に気が付いた俺は焦って着衣を整えようとした。 「ちょっとネク君!今日こそはいいでしょう?」 その言葉に俺の心臓が焙る。 それってもしかして///!!! 「何言って///!!お前が勝手に!!」 「もしかしてまた逃げる気かい?ここまでしといて失望したよネク君!」 ヨシュアに流された自分も悪いが、 またしてもそんな突拍子もない事を言い出すヨシュアの我が侭に流石に俺も腹が立つ。 俺の気持ちは無視かよ!! 勝手に襲って勝手に続きを強要して!! 俺はそんなお前の心境だって何も聞かされてないのに… 「お前の目的は何なんだよ!!その…せ、セックスする為にわざわざ俺の前に現れたのか?!」 つい口をついて出てしまった暴言に反応してヨシュアの顔は珍しく怒りの表情に変わる。 「ネク君にそんな風に思われてたなんて心外だよ。 やっぱり頭の悪いネク君には何にも分かってないんだね!」 「何だよそれっ!!」 「どうせネク君は僕よりも尊敬する羽狛さんに会えた方が嬉しかったんでしょう?」 何でいきなり羽狛さんが出てくるんだよ?! 訳が解らない!! 「…否定しないんだね。」 するとヨシュアは深く溜息をつくと静かに階段を降りて行った。 「…お前だって誰かと電話ばっかりして…親友とか言ったのに俺といる時にはあんな事しかしないくせに…」 俺は去り行くヨシュアの背中に吐き捨てる様に呟いた。 しかしヨシュアの反応は無く、無機質なチャイムの音が虚しく階段に響いてた。 それから放課後までの間お互い会話は無く、二つの机の間には重い空気が流れていた。 俺はいたたまれなくなり先に教室を後にして、何となく羽狛さんのいる社会科準備室に足を運んだ。 今唯一気兼ね無く話せる相手だった為、気を紛らわしたかったのかもしれない。 「羽狛さん、居ますか?」 「よう、ネク〜どうしたぁ?」 相変わらず気の抜けた声で陽気に羽狛さんが迎えてくれた。 「ちょっと色々と話がしたくて。」 「その顔はもしかしてヨシュアと喧嘩でもしたのかぁ?なんか暗いぞ?」 具体的な内容は伏せて、気が付けばヨシュアの我が儘の愚痴などを話していた。 そんな俺を羽狛さんは優しく受け入れてくれ、宥める様に応対してくれる。 そして次第に羽狛さんと話しているうちに少しずつ心の重荷が軽くなり俺は笑顔を取り戻した。 不思議な人だな…話してると心が軽くなる。 やっぱりCATは凄い! 時間を忘れて話し込んでいると羽狛さんがコーヒーを入れてくれた。 ヨシュアが気に入ってよく飲んでいたせいか、その香りは否応なしにヨシュアを連想させる。 折角和んでいたのに再び俺の表情に暗い影が落ちた。 俺達ずっとこのままだったらどうしよう… 「そういえばヨシュアとはもうヤっちまったか?」 は?!今何てっ///?! まるで突然俺の心理を丸裸にされた気がして驚愕し、 俺はつい持っていたコーヒーを勢いよく床に落としてしまった。 「あっちぃ!!!」 「ネク!!大丈夫かぁ?!」 みるみる制服に染みが広がっていく。 羽狛さんがすかさず近くにあったタオルを差し出した。 「着替え持ってきてやるからそれ全部脱げ!」 「すいません…」 羽狛さんが何処かに着替えを取りに行ってくれた間、仕方なく俺は下着一枚の情けない姿になった。 羽狛さんに迷惑かけて…なにやってんだよ俺。 落ち込んでいるのもつかの間すぐに羽狛さんが戻って来た。 「大丈夫かぁ?ネク〜持ってきたぞ!」 そしてジャージらしきものを手に持って羽狛さんが俺に駆け寄って来る。 しかし… 「うわぁっ!!」 床はびしょ濡れだった為、急いでくれた羽狛さんは足を滑らせ見事に俺の方に転倒した。 「すっすまんネク…痛ててっ」 その勢いで俺も床に倒れ込み、結果羽狛さんに押し倒されてしまった。 重いっ… 「はっ羽狛さんっ大丈夫ですか?」 すると突然入口の扉がスライドされた。 「もう、聞いてよ羽狛さん!ネク君が…」 その声は…ヨシュア?! 羽狛さんの肩越しに俺達を見下ろすヨシュア。 その凍り付いたヨシュアの表情を見て、俺は改めて今の状況を悟ってしまった。 下着は履いているが羽狛さんが覆い被さっている為全裸に見える俺。 その俺を抱きしめる様に押し倒している(様に見える)羽狛さん。 こんな状況誰が見たって… 「いい仕事してるね…羽狛さん。邪魔みたいだから僕は失礼するよ。ネク君じゃあね!!」 扉が勢いよく閉まり、その盛大な音で反射的に肩がすくんだ。 どうしよう…なんか完全に誤解された!! 「ヨシュアの奴なんか勘違いしてるなぁ…」 羽狛さんは困ったように頭を掻くと、直ぐに俺から立ち退いて面倒臭そうに床を掃除し始めた。 「…ヨシュア…なんか怒ってた。」 ヨシュアに誤解されたのが正直心底堪えた俺は無気力な手つきでジャージに着替えたのだった。 二日続けての寝不足は流石に堪え、今朝時計を見ると既に登校時刻を過ぎていた。 「えっ?!しまった!!」 慌てて支度をして家を飛び出した。 しかしその足取りは次第に重くなりついには途中で途絶えてしまった。 学校…行きたくないな… 何となく昨日あれから羽狛さんと話合っていた事が頭を過ぎる。 「ネクはヨシュアの事がホントに好きなんだなぁ〜♪」 酷く落ち込んで着替えている俺とは対象的に羽狛さんはへらへらと笑いながら言った。 「なっ///別にそんな事は…」 俺がヨシュアを…好き… 確かに好きな事は自覚していたが、それがどんな種類のものなのかは正直まだよく解らなかった。 「そんなに落ち込んじまって…浮気だと思われたのが嫌だからじゃないのか?」 「浮気っ?!俺達別に付き合ってる訳じゃ…それにまだ…そ、そんな深い関係じゃない///!!」 そんなの…結局セックスだってしてないのに…浮気だなんて言えない。 ただヨシュアを酷く傷付けた気がしてとても辛かった。 「へぇ〜そうかぁ…あのなぁ、お互い気持ちは素直に言わなきゃ伝わらないぜ? 今は思考が読めるわけじゃないんだぞ?」 羽狛さんは何をどこまで知っているのか解らなかったが、その言葉は俺の胸にじんわりと染み渡った。 そういえば俺、恥ずかしいばかりでヨシュアに自分の気持ちを伝えた事なかったかもな… また会えて嬉しいってちゃんと言ってやれなかった。 「それともう一つ教えといてやるよ! 素直になれないっていうのは不必要に意識してる…つまり大好きって事だよ。分かるか? どうでもいい奴にならわざわざ意地や見栄張らないだろ?」 「それは…」 「お前らどっちも素直じゃなさすぎるんだよ!まぁヨシュアに関しては不器用ってとこかな! 全く大人か子供か判っかんねぇな〜」 道で立ち尽くしている俺の頭の中で羽狛さんの言葉が何度もリピートしていた。 俺はヨシュアを酷く意識している…それは…きっと… 大好きって事…だよな// 薄々気付いていたが認めるのが怖かった感情。 それはヨシュアへの恋心。 しかしそれは恐れていた通り残酷なものになってしまった。 ヨシュアの酷く傷付いた顔が今でも脳裏に焼き付いている。 俺の体だけが欲しいならあんな顔しない…よな… 改めて言葉にされた事などなかったが、今思うとやっぱり俺への愛情は偽りでは無い事が確信出来る。 しかし… あんな所見られるなんて!! きっと呆れられ、嫌われたに違いない。 今考えてみると流されるまま行為に溺れ、直前でヨシュアを拒絶して… 俺の方こそきっと訳分かんないよな… 「ヨシュア…」 折角また会えたんだ。 もう後悔はしたくない! ヨシュアが残してくれたこの世界で俺はヨシュアと二人で今を楽しむんだ!! 羽狛さんのお陰で何かが開けた俺はしっかりとした足取りで再び学校への道を辿りだした。 ちゃんと誤解を解いたら、素直な俺の気持ちを伝えよう… 学校に着いたのは既に一時間目に差し掛かった頃。 ヨシュアの様に遅れて教室に入る勇気など到底無かった俺は、授業が終わるまでの間例の階段で過ごす事にした。 授業中の閑静な校内に俺の足音だけが響いていく。 しかし階段の下まで来るとその静寂は上からの何者かの話し声によって掻き消された。 「…うん…そうだよ…」 この声…ヨシュアだよな?! そこにいるはずも無い人物の存在に面食らった俺は、まるで隠れるように息を潜めて様子を伺う事にした。 なっ何で隠れてるんだよ俺っ! 聞き耳を立ててみると、どうやらヨシュアは誰かと電話している最中らしい。 また電話か…一体何話して… 「好きだよ…当然だよ!…僕だって愛してるさ…」 ……?! 何だよこれ!!…今のは… そんなのってないだろ… ヨシュアの口から出たまさかの電話越しの相手への愛の告白。 みるみる胸が強く締め付けられ、込み上げて来たストレスは涙となって俺の瞳からとめどなく溢れ出す。 「…っ!!」 居た堪れなくなった俺は急いでその場を走り去った。 「…?ネク君?!」 その音でヨシュアが気づいたのだろうか。 階段の上から俺を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、 一刻も早くその場から立ち去りたかった俺は振り返らずにただ長い廊下を駆け抜けていった。 唯一の憩いの場を失った俺は行くあても無く校内を彷徨っていた。 俺…告白する前に振られたのかな… 今までの希望や確信は全て打ち砕かれ俺の中にはただ絶望だけが残っていた。 「うっ…っ…」 涙は枯れる事無く嗚咽と共に溢れるばかり。 人気の無い方へと導かれて行くと気がつけば体育館の前に来ていた。 足を踏み入れると広い館内は物音一つ立てずに悠然と俺を迎え入れる。 ふと目をやると薄暗い体育倉庫の扉が半開きになっており、静かな暗闇に誘われる様に俺はそこに入っていった。 太陽の光があまり届かないそこは、空気も冷たく黴臭さが少し鼻をつく。 体育館が陽ならばまるで陰の存在の様なそこは、何だか今の俺の心境に笑える程ぴったりだった。 杜撰に積み上げられたマットの上にうずくまる様に腰掛けると暗闇が優しく俺を包み込む。 そこで今までのヨシュアの行動を一つ一つ思い出していると、 次第に裏切られた様な心境になり悲しみが胸を貫いた。 あいつに裏切られたのこれで二回目だよな… 今を楽しめという羽狛さんの受けおりのスローガンは虚しく砕け散っていく。 恐らくこの状況が楽しめる奴は相当なマゾしかいないだろう。 陰湿な場所でネガティブな思考に浸りひっそりと身を固めていると、 突然俺を現実に引き戻すように胸ポケットの携帯が振動した。 画面を開くとその着信の主は… 「えっ?!」 ヨシュア?!何で?! 思わぬ相手に驚き俺は様々な思考を巡らせた。 しかしどれをとってもいい内容だと思えなかった俺は、 そのまま画面を閉じ鳴り止むまで携帯を見詰めていた。 ごめんヨシュア…こんな時もうどうしていいのか分からないんだ… 携帯が鳴り止み再びこの陰湿な空間が静寂に包まれた。