「またこんなところにガラクタかよ」 狭い路地を塞ぐ無造作に積み上げられた粗大ゴミ。 あのスピーカー片手に意味不明な事を口走る死神に言わせればこれは芸術的なオブジェらしいが、俺達にとっては邪魔なゴミ以外何物でもない。 「僕の渋谷にこんな不法投棄が許されると思ってるのかな」 暑さでさっきから機嫌の悪いヨシュアは目の前の障害物で更にイラついているようだ。 ヨシュアは低い声で文句を囁くとその粗大ゴミの山から目立ってはみ出していたドラム缶に盛大な蹴りを入れた。 すると直後、微妙なバランスを保っていたゴミの山が音を立ててヨシュアの頭上に落ちていく。 「危ないっ!!」 よく考えればこんな時こそサイキック使えばいいんだけど、つい反射神経が働いてしまい俺は何故か体を張ってヨシュアを庇っていた。 あんなに気に入らなくて、しかも俺を殺したかもしれない奴なのに、何故か一瞬ヨシュアを失うのがとても怖くなった。 何なんだろう、この気持ち、出来れば気付きたくないな… 頭に何かがぶつかった衝撃と激しい頭痛、顔を伝う血の暖かさ、ああ…俺また死ぬのかな、なんて思いながら意識は次第に遠くなっていった。 世界でたった二人だけ 「君、大丈夫かい?」 ……? 目を開けると知らない顔が心配そうにこっちを見詰めていた。 ふわふわの銀髪で華奢な体してるから女の子かと思ったけど、声を聞くと完全に男だ。 「あ、良かった。死んでるのかと思ったよ。」 「…俺、どうして…」 体を起こすと激しい頭痛が襲った。 一体何が起こったのか、辺りにはボロい電化製品や家具が散乱している、そしてこいつは誰なんだろう、 通りすがりにしてはこいつも怪我してるっぽいし、俺何か事件にでも巻き込まれたんだろうか。 そもそも俺はここで何していたんだろう。 「君、僕の事何か知ってるかい?多分一時的な物だと思うんだけど、僕記憶が全然無いんだ。 気が付いたら君とここで倒れてたから多分友達か何かだと思うんだよね」 辛そうに頭を押さえながら彼は重大な事を何でもないように淡々と語る。 「それは大変だな、そっか…ええっと、俺とお前は…てゆーか俺の名前、何だったっけ…」 自分の名前に言葉を詰まらせて俺は事の重大さを理解した。 記憶喪失な奴が目の前にいるだけでも面倒くさいのに、まさか自分までがそうなっているなんて。 「厄介な事になったね、君もそうなんだ。」 彼は落胆して肩を落とすと、俺に優しく手を差し伸べた。 「一緒に思い出すしかないね、君、よろしく。」 「ああ…悪い…」 少し冷たい彼の手を取ると何故か胸がドキドキした。 俺達は一体どんな関係だったんだろう、何でこいつの手でこんなに胸が騒ぐんだ。 過去を無くした俺達は今世界でたった二人きりになってしまったようなそんな感覚がした。 俺には今目の前にいるこいつが世界の全てで、こいつにとってもまた俺がそうなんだろう。 行くあてもなく立ち往生していると急に雨が降ってきた。 そういえばさっきから不快な湿度を感じていたような気がする。 「とにかく、どこかへ行こうよ」 彼は俺の手を取って宛もなく走り出した。 繋いだ手をずっと離せないのはきっとお互い不安で仕方ないせいなんだろう。 「ひとまず状況を整理してみようよ」 俺達は近くにあった公園の遊具でひとまず雨宿りしていた。 遊具と言ってもただ丸い形をしていて中が空洞になっている用途の分からない何か。 壁には無数の下らない落書きだらけだ。 子供が隠れて遊ぶものなんだろうけど成長期の俺達には狭くてさっきから微妙に体が触れ合ってしまう。 「多分僕達歳は同じくらい、だよね。クラスメイトか何かで買い物中だったとか?」 そう言って彼は現場にあった買い物したであろう荷物を取り出した。 「うわ、それ女物じゃないか?」 彼が取り出したのは白い清楚なワンピース。 男二人で買いに行ったとは到底思えない。 「…君に女装趣味があったとか?」 「何で俺なんだよっ!大体お前の方が似合いそうだ。」 「僕?たしかに僕は何でも似合いそうだけど…」 結局ワンピースは誰かへのプレゼントだろうという事で落ち着いた。 「そういえばさ、僕気が付いた時君に庇われてた気がするんだ。多分君が僕の事助けてくれたんだよね。フフ、ありがとう」 ありがとうと言いながら俺に笑いかける仕草が何だか懐かしい気持ちにさせる。 俺がこいつを庇ったのが少し分かる気がしてきた、きっと俺はこいつの事結構好きだったんだろうな。 「本当に助けてたとしても、結局怪我させてるし意味なかったな」 「フフっ仕方ないよ」 雨はますます強くなり、遠くで雷の音がしている。 まだ昼過ぎだというのに辺りは薄暗くなっていた。 俺達のいる遊具の中には光はあまり入らないし、 暗くて狭いこの空間でこいつの静かな息遣いとやたらドキドキしている自分の心臓の音が聞こえる。 「頭痛い…」 さっきから仕方なく密着している状態な上に彼は俺の肩に頭を預けてきた。 ほんのり香る大人っぽい香水の匂いが俺の沈んでいる記憶に何かを訴えかける。 男とこんなに密着しているのに嫌な気がしないのが不思議だ、むしろ雨なんか止まなければいいとさえ思ってしまう。 「なんかさ、僕君の事が好きみたいなんだよね」 突然彼が突拍子もない事を言い出したものだから俺の心臓が大きく跳ねた。 それから胸の奥の熱いものがじわじわと溶けて身体中に広がっていく感じがして目頭が熱くなっていく。 不覚にも男に告白されて感動している俺がいた。 「こんなの、気持ち悪いよね」 彼が少し自嘲しながら呟く。 俺は慌て首を横に振った。 「じゃあ、君も僕を好きだったりするの?」 「そう、かもな…」 さっきから不自然に胸が騒ぐ原因がこれで解明した。 「僕達きっと付き合ってるんだよ。」 「俺も、そんな気がする。」 こんな狭い場所で体を密着させながら愛を告白しあったら、もう駆け出した衝動が止まらない。 俺はどうにか疼く体を抑えようと何か会話でもして気を紛らわそうとした。 しかしそんな俺を彼がやたら熱い瞳でじっと見詰めてくる。 その目が真っ直ぐ過ぎて俺の考えている事がバレてしまいそうでつい目を反らした。 「付き合ってた時にしてた事とかすれば、思い出すかもね」 彼が低く囁いたと思ったら顔を上向きにさせられてキスされた。 俺の考えていた事を見透かされたのか、それともいつもこれが俺達の自然な流れなのだろうか。 柔らかい唇がくっついたと思ったら舌が入ってきて俺の口の中を這いまわっていく。 今の俺には全てが初めてで新しかった。 俺達たとえ何回もキスしてたとしても俺にとってはこれがファーストキス。 柔らかくて熱くて気持ちよくてドキドキが止まらない。 すると彼は俺にキスをしながら身体中を撫で始めた。 最初は服の上から擦るように背中や腰を触り、その手は上着の中に侵入して直接肌に触れる。 ぞくぞくするようなくすぐったさが気持ち良くてもっと触れて欲しい。 「君の名前呼びたいんだけど分からないや、どうして思い出せないんだろう。」 彼は悔しそうにそう言いながら俺の首筋にキスをした。 「僕の付けたキスマークの痕とかないかな?」 首の辺りでちゅっと音がして軽い痛みを感じた。 キスマークを付けられているらしい。 「記憶が戻ったら今日の事忘れないように、ね」 ああ、なるほどな、なんて納得していたら今度は彼の手が乳首を攻め始めたから急に変な感覚がして余裕が無くなってくる。 前の俺はこんな時どうしていたんだろう、喉の奥から込み上げてくる変な声みたいなの我慢してたのかな。 「っ…」 彼は暫く両手で乳首を摘まんだり押し潰したりして遊んでいると、俺の上着をたくし上げてそこを舌で愛撫しはじめた。 「ぁ…それ、駄目だっ…」 「何が駄目なの?」 男の癖に自分の乳首がこんなに感じるなんて知らなかった、こいつに色々と開発されていたんだろうか。 そうだとしても今の俺は完全に気分は童貞だ、感じてる姿なんて恥ずかしくてとても見せられない。 「君がそんな可愛い顔するから、最後までしたくなっちゃった」 笑顔で大胆な事を言われて顔が熱くなっていくのが分かった。 最後までって、やっぱり俺がヤられるんだよな… 「それは、ちょっと…」 「大丈夫だよ、きっと僕達よくしてたから慣れてるはずだし」 そう言うと彼は俺のベルトを外して緩くなったウエストに手を差し入れた。 「ちょっ…おい!」 下着の中まで手を入れられて既に恥ずかしい形になっていたものを手でしごかれていく。 「っ…やめろって…」 先走りで先端濡らして甘い声で拒否してもむしろ煽っているようなものだと我ながら思う。 実際気持ちいいし本音はもっとして欲しかった。 「僕のも触って…」 俺のを触りながら彼は片手でベルトを外して自分のものを取り出した。 彼も俺と同じくらい興奮しているのが分かった。 すっかり気持ち良くなっていた俺は半分惚けた頭で目の前に出されたそれに躊躇なく手を這わす。 「ん…」 ゆるゆるとしごいてやると彼が気持ち良さそうな声を漏らしたのでもっとそんなこいつが見たくて手の動きを早くした。 「ハァ…もっと、気持ちよくしてくれる?」 膝立ちになっていた彼はペニスを俺の顔の方へと向けてくる。 彼がどうして欲しいのか分かってしまった俺は目の前にある男性器にとまどった。 前の俺はこういうの率先してしてやってたのか?!あんまり考えたくないな… 「フフ、たくさん濡らしてくれないと君のここに入らないよ」 すると彼は悪戯に笑いながら俺の最も恥ずかしい所を指でつついてくる。 「ばかっ…そんなところ、触るなっ…」 「ほら、して?」 「…い、嫌だっ…」 流石に好きだと自覚していても男にフェラする勇気なんて俺にはまだ無い。 なんて思っていた筈なのに、結局こいつに流されてフェラしている俺、きっと前の俺はこいつの尻に敷かれていたに違いない。 「う…んっ…うう」 しかも無理だって言ってるのに強引にアナルに指まで突っ込まれてさっきから痛くて仕方ない。 俺達セックスに慣れてるって言ったの誰だよ! 「指もう一本入るかな、痛かったら言ってね?」 「うう…んっ」 言えと言われてもさっきから口は解放させて貰えないので、俺はただ彼のを咥えたまま小さく首を横に振る事しか出来なかった。 一体何本指が入っているのか不明だけどさっきから入り口が痛くて仕方ない。 もしかして俺達本当はこれが初めてなんじゃないのか、なんて今更思ってしまった。 「痛い?ごめんね、僕何も覚えてないから君の事気持ちよくさせてあげられないかもしれない」 すると俺の顔色を察したのか彼は困った顔をしてとても切ない言葉を口にした。 何だか忘れてしまった事を詫びられているような気分になり、俺は気にしていないという気持ちを伝える為に舌を絡めて彼に奉仕をした。 彼はそんな俺に嬉しそうに微笑んで軽く頭を撫でると再び俺の中を弄り始めた。 俺をあやす様なそんな動作をするこいつを見ていたら、案外俺より年上なのかも、なんて思った。 彼はゆっくり丁寧に俺の中で指を出し入れしている。 次第に痛みよりももどかしい変な感覚が強くなってきて、下半身が熱くなっていく感じがした。 「…んっ…う//」 それはどんどん強くなってきて、彼の指があるどこかの場所を掠める度に俺の体が小さく震え始める。 「ここが気持ちいいのかい?」 そんな俺の様子を察知した彼は執拗に俺の感じる場所を攻め始めた。 慣れない感覚に体が支配されてしまう感じがして怖くなった俺は焦って首を横に振ったけれど、 俺の下半身は意志とは反対に喜んでいるようだった。 何だこれ、おかしくなる!こんなの俺じゃない… 「そんな顔されたら入れたくなっちゃうけど、いい?」 「はぁっ…ちょっと、待てっ…う、あ!」 やっと口を解放されたと思ったら両足を思い切り屈折させられて大きく割り開かれた。 俺今凄い格好してる、恥ずかしくてもう逃げたい。 しかもなんか否応なしに俺の入り口にこいつの先っぽ当たってるし、入れる気満々じゃないか! 「ちょっ…待てって、むりっ…あ!」 嫌がる俺を無視して彼は一気に先端を押し込んでいった。 しかし案外予想していた痛みは無い、恥かしいけど指で大分慣らされていたらしい。 「入っちゃった。僕の、君の中に。フフフ」 こいつの強引さに文句くらい言ってやりたかったけど、合体して感動している幸せそうな彼を見たらなんかもう何も言えなくなってしまった。 俺も何だか胸があったかくなってきて、ちょっと幸せだって思ったりしているんだ。 「あっ、ん…ぁっ」 彼が動く度に頭に壁が当たって痛いけど、そんな事大して気にならないくらい俺はすっかり気持ち良くなっていた。 よく見るとこいつも天井に頭ぶつけてる、お互いこんな狭い所でよくやるよな。 でも何だかこいつとこうしてると幸せであったかい気持ちで胸が一杯になる。 俺どういう経緯でこいつを好きになったのか覚えてないけどちゃんと体は覚えてた、恋心まで忘れなくて良かった。 そう思ったら何だか泣けてきたから慌ててセックスに集中した。 彼が腰振りながら俺のまで手で愛撫し始めたから気抜いたらすぐにイきそうになってしまいそうだ。 「あっ、だめ、だっ…イく…って」 「うん、僕もイきそいうなんだ、一緒にイけるかな」 一緒にイくとかなんか恥かしいからやめろって、なんて思っても彼が急に強く扱くから絶頂はあっという間にやって来た。 「う、あ…あっ!」 中からの快感と直接の刺激で一瞬意識手放しそうになるくらいの快感を感じながら俺は彼の手に射精していた。 「好き…んっ」 すぐ後に彼が俺に告白をしながら動きを止めて俺の中でびくびくと震えている。 いかにも中出しとかしそうな奴だけど案の定やりやがった、でもすっかり疲れきっていた俺はもうそんなのどうでも良かった。 持っていたポケットティッシュで適当に後処理して、俺達は相変わらず雨宿りをしていた。 いつの間にか雨がかなり激しくなっていたけどそんなの気付きもしないくらいセックスに夢中になっていたらしい。 だるくて重い体を彼に預けると肩に腕が回ってきて一層体が密着した、出来ればずっとこのままこうしていられたらいいのに。 「疲れた?」 「ああ、ちょっと。」 優しく俺を撫でる手が心地よくて幸せだ、俺は本当に彼の事が大好きなんだと思った。 記憶が戻ったらこいつの嫌なところとか思い出すんだろうか、 いっそこのまま記憶が戻らなくてずっと二人きりでいられたらなんてつい思ってしまう。 外は雨、この狭い空間で俺達たった二人きりの狭い世界がずっと続けばいい。 「ねえ、名前付けようよ、君って呼ぶのも何だか味気ないし。」 「いいけど…変な名前付けるなよ。」 「うーん、じゃあブルー。その服の青が良く似合ってるからブルーって呼ぶ事にするよ。」 なんか戦隊物のレンジャーみたいな名前だけど俺も青い色が好きみたいだしまあいいか。 「じゃあお前はピンクだな。」 「ピンク?どうして?」 「今お前頬っぺたピンクだから。」 彼の白い肌は運動したせいでピンク色に染まっている。 何だかそれが可愛くて俺は結構気に入っていたりする。 「うーん、まぁ悪くないけど、僕ピンク好きだしね。」 「じゃあ決まりだな、よろしく、ピンク。」 「うん、よろしく、ブルー。好きだよブルー、ブルー大好き、フフっ」 こいつはそれから嬉しそうに何度も俺の名前を呼んだ。 俺はちょっと照れくさかったから心の中で何度もピンクって繰り返した、次はもう忘れないように。 すると彼はその辺に落ちていた小さな石で落書きだらけの壁に何かを書き出した。 「次は忘れないように書いておこうよ。」 無数の落書きの上に一際大きくピンクが俺達の名前を彫り始める。 相合傘なんか書くから見ているこっちが恥かしい。 「うわ、なんかそれ痛い感じだな…」 「失礼だよブルー、僕結構ロマンチストなんだよね。」 いつか記憶が戻ったらピンクとブルーは俺達の中から消えてしまうのだろうか、 わざわざ書き残すなんて何だかそれを暗示しているみたいでちょっと切ない。 「ブルー、疲れちゃったよ。ちょっと寝ていい?」 「ああ、俺も眠いかも…」 出来れば目覚めても隣にいるのがこの俺の恋人ピンクでありますように。 遠のく雨の音を聞きながら俺はずっとそんな事を祈っていた。 「ネク君、起きてよ。」 「ん…」 気がつくと俺は知らない場所にいた。 しかも何だかヨシュアの距離がやたら近いし体中が異常に痛い。 「ここ、どこだ?」 「さあ、何か僕達ここで眠ってたみたいなんだけどどうしてここに居るのか思い出せないんだよね。」 確かにここに至るまでの経緯が全く思い出せない。 たしかあのオブジェ死神のガラクタの下敷きになって、それから… 「俺も全く思い出せないな。誰かに運ばれた、とか。」 「こんな雨の中?何だか気味悪いね。」 「気失ってたのを誰かが助けたとか?でもなんか体中が痛いな…」 特に腰とケツの辺りが異常に痛い!一体どんな運ばれ方したんだ… 「羽狛さんかなぁ、まいいや。とりあえず外は雨だし暫く雨宿りしていこうよ。」 「いいけど、ここ狭いな。うわっ、あんまりくっつくなよ!」 やたら狭い空間な為にヨシュアと密着せざるを得ないのが妙に気まずい。 「こっちこそ、ネク君もっとそっちに詰めれないのかい?」 こんな空間でまたいつもみたいに喧嘩ムードになったら厄介だ。 仕方なく俺は隅で小さくなっていると目の前に一際目立つ寒い落書きを発見した。 「何だこれ、寒いな…」 相合傘にピンクとブルーとかいう謎の名前が書いてあり、その上に「初めてHした記念」とか寒い事が書いてある。 「まさかここでしたんじゃないだろうな、最悪だ。」 「何て書いてあるの?」 するとヨシュアが身を乗り出してその落書きを見詰めている。 やたら顔が近くてなんかいい匂いがして少し変な気分になる、ヨシュア相手に何考えてるんだ俺、気持ち悪っ! 「たしかに寒いね。」 「だろ?バカップルって感じだな。」 「でもさ、なんか…」 ヨシュアは真面目な顔をして暫くその落書きに見入っていた。 急に黙るものだから思わずその真剣な横顔を見詰めてしまった。 女みたいに睫毛長いとか、男のくせに肌白くてつるつるとか思っていたら変に胸がドキドキして意識してしまう。 なんかさっきから気持ち悪いな俺、どうかしてる。 「この二人ちょっと切ないね。」 するとヨシュアが切なそうに呟いた。 いかにもこんなの馬鹿にしそうなのに何だか意外だ。 「こんな場所でこんなに大きく主張するなんてきっと外では大きな声で言えない関係だったんじゃない? 名前だって抽象的だしさ。僕達はここに存在してるってどうしても確認したいみたいなそんな感じがするよ。」 ヨシュアのちょっとロマンチストな推理に俺は迂闊にも感動してしまった。 愛しそうにその落書きを撫でる綺麗な横顔にまたしても俺の胸がときめく。 何だこれ、まるで俺こいつに恋でもしてるみたいじゃないか。 ありえない、こんなの、俺は何も気付いてない。 気が付くと外から光が射していていつしか雨は止んでいた。 「ネク君、行くよ。うっ…なんだか腰が痛いんだけど」 「あっ、おい!勝手に決めるな、荷物くらい持てよ!」 ヨシュアまで腰が痛いのか、あのガラクタが俺達の腰に直撃でもしたのかな。 狭い入り口を痛い腰屈めてくぐると珍しくヨシュアが手を差し伸べてきた。 「大丈夫かい?」 「あ…わ、悪いな」 すると何故かヨシュアは俺の胸元をずっと凝視している。 珍しく協力的だと思ったら今度は何なんだ。 「何だよ?」 「ネク君、いつの間にキスマークなんて付けたの?ちょっと引くんだけど。」 「はぁ?!」 慌てて胸元を見てみると確かに虫刺されのような赤い痕が点在していた。 俺がそんな行為をするはずもないし、虫指されにしては痛くも痒くもない、だとすれば犯人は… 「お前だな!マジで信じらんねぇ!」 「僕?まさか、僕はそんな中途半端な事しないよ。するならとっくに犯してるって」 「はぁ?!犯す?!なっ、何言ってんだよっ//」 ヨシュアが急に犯すとか言い出すから変な想像してしまった。 俺達がそんな事…うわああ!ありえないありえない!! なんて思いつつも心臓がやたらドキドキしているのは何故だろう。 「一体誰が付けたんだろうね、ちょっとムカつく」 ヨシュアは謎のキスマークを突付きながら少し不機嫌そうにしている。 何だかさっきからこいつ変だ、俺も負けてないけど。 「なんかお前、変だぞ?」 「そうなんだよね、なんかさっきからネク君見てるとさ…」 ヨシュアはそこで言葉を詰まらせて歩き始めた。 「ホラ、ネク君行くよ。」 こっち見ないけどなんか手とか差し伸べてくるし、手繋げって事か? でも何故かその手を取りたくなって俺達は手繋いで公園を後にした。 さっきから奇妙な事ばかり起こる、一体記憶の無い間に何があったんだろう。 思い出そうとすると急に頭が痛くなる、何だか大切な何かを忘れているような気がするんだけど。 初めて繋いだヨシュアの手が少し冷たくて、この感触が初めてなのに初めてではないような不思議な感じがする。 遠くなっていく公園の俺達が居たあの変な遊具がなんだか切ない。 「なあ、またこの公園来ようぜ。」 「いいよ、雨宿りするには丁度いいかもね。」 早くまた雨が降らないかな、なんて淡い期待をしながら俺はずっとこの手を離さないでいた。 END 記憶喪失とかマジで色々と辻褄合わないですが見逃してやって下さい!! ネクもヨシュアも実は両想いっていういつもな感じのネタです… 何かの拍子に突然記憶が蘇ったら楽しいです!!二度目エッチした後とかwww 記憶が無いっていうのは二人のしがらみとか意地とかプライドとか無いようなものだしお互い素直そうだ! あー私も記憶喪失になって全てを放棄したいですww